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「LIFE加算」算定の先行事例(第1回)
ADL維持等加算の報酬が10倍! 増収のチャンス
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2021年度介護報酬改定における最大の注目点は、LIFE(Long-term care Information system For Evidence、科学的介護情報システム)の導入である。数多くの加算の算定要件にLIFEへのデータ提出や活用が位置付けられ、今後の介護経営に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

 LIFEにいち早く対応した通所介護と通所リハビリテーションの事業者の取り組み事例を4回にわたって紹介する。
(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の内容の一部です)

 通所介護ADL維持等加算については、加算(I)が30単位/月、(II)が60単位/月と、それぞれ2021年度介護報酬改定の前の10倍に引き上げられた(図1)。算定要件は緩和され、「5時間以上のサービス提供回数が5時間未満の回数を上回る」が削除。「利用者等の総数が10人以上」となり、例えば3時間以上4時間未満の短時間サービスを1日複数回提供するような機能訓練型の事業所などでも算定が可能になった。

図1 ADL維持等加算の見直し
(※クリックすると拡大表示されます)

 自立支援に特化したサービスを提供する(株)ポラリス(兵庫県宝塚市)では、以前から利用者のBI(バーセル・インデックス)を測定していたものの、短時間サービスのため改定前は算定できなかった。今後はADL利得平均2以上を要件とする加算(II)を全事業所で算定する計画だ(2021年6月時点)。代表取締役で、日本デイサービス協会理事長の森剛士氏は「単位数が10倍になったことは非常に大きい」と述べる。

 ADL維持等加算の算定に当たっては、評価対象利用開始月と、その翌月から6カ月目にBIを測定して提出する必要がある。評価対象期間は12カ月で、2021年度から新たにBIの測定を行う事業所は2022年度以降の算定となる。算定を開始しようとする月の前年同月に、「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」の「ADL維持等加算(申出)の有無」に「あり」と届出を行い、かつ算定開始月の末日までにLIFE上でADL利得の基準を満たすことを確認し、請求する必要がある。

 また2021年度改定で算定要件に追加された「BIを適切に評価できる者」がADL値を測定するという要件について、厚生労働省は2021年4月9日付のQ&Aで、「BIの測定方法にかかる研修の受講や、厚労省が作成したマニュアルや動画等を用いて測定方法を学習する」と例示している。評価に従事する職員はリハビリ職による指導研修に定期的に
参加すること、BIによる評価を初めて行う職員には理学療法士(PT)などが同席しなければならない旨なども示された。

基準を満たすかはLIFE上で確認

 6時間以上7時間未満のサービスを提供する、社会福祉法人城島福祉会・ふれあいの園デイサービスセンター(福岡県久留米市)では、ADL維持等加算が新設された2018年度に準備を開始し、2019年度から認定を受けて加算(II)を算定している。

 同事業所では6年ほど前に理学療法士(PT)を採用して以来、機能訓練に力を入れてきた。管理者の江藤伸成氏は「以前から、通所介護においても機能訓練が重視されるはずだと考えていた」と振り返る。毎月BIの測定を行っており、2021年度改定で見直された算定要件に従って2020年4月~2021年3月の12カ月分のデータをLIFEに入力したところ、ADL利得の平均は2.7だった。2021年度も引き続き加算(II)を算定していく。

 改定前と異なる点は、認定の通知がなくなったこと。従来は算定適合事業所について自治体から審査結果が通知されていたが、改定後はLIFEでのデータ提出となったため、条件を満たすかはLIFE上の計算を基に判断する必要がある。江藤氏は「自分でチェックしなければならない手間が増えたが、単位数がアップしてより評価されたのは良かった。ただ、利用者の金銭的な負担が増えてしまったという懸念はある」と語る。

個別機能訓練加算は減収要因に

 また個別機能訓練加算も大きく再編された(図2)。改定前は旧加算(I)と(II)を併算定すれば、102単位/日を取得できていた。改定後は新たにLIFEへの個別機能訓練計画等の内容を提出することを要件とした加算(II)が新設されたが、(I)ロと(II)を併算定しても、改定前の102単位からはマイナスとなる。

図2 個別機能訓練加算の見直し
(※クリックすると拡大表示されます)

表1 ポラリスの2021年度改定の影響
(※クリックすると拡大表示されます)

 ポラリスでは全ての事業所で旧(II)を算定し、一部で旧(I)との併算定も行っていた。森氏は「個別機能訓練加算の減収分は致し方ないだろう」と語る。改定を受けて新たに機能訓練指導員の採用を進め、今後は21事業所で(I)ロを、残りの25事業所で(I)イを算定する方針だ。加算(II)は、全事業所で併算定する。これらの影響を含めて同社では改定後、加算のみで月約520万円の増収を見込んでいる(表1)。

 2020 年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による利用者の欠席も目立ち、初回の緊急事態宣言時の休止率は約3割だったが、2021年4月の宣言下では影響は限定的だった(図3)。

図3 ポラリスの事業所全体のCOVID-19の影響(売り上げ、体験数、欠席率)(※クリックすると拡大表示されます)

 森氏は「兵庫、大阪などでは宣言の影響はあるが、東京はない。今後は社会全体で、COVID-19で家にこもっている高齢者のADL低下が問題になり、機能訓練がより重要になってくるだろう」と話す。

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連載の紹介

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