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DX革命の最新動向と2021年度介護報酬改定
介護現場のICT活用を促す加算・要件緩和が続々
書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より

 2020年に介護現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に後押ししたのが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行や深刻な介護人材不足だった。見守りセンサーやインカム、介護記録システムといったICT(情報通信技術)機器の導入が急速に進み、介護職員の負担軽減、業務の効率化、ケアの質向上、収益アップを実現するケースも出てきた。

 以下では、介護現場におけるICT導入を評価した2021年度介護報酬改定の最新動向を解説した。
(※この記事は書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』の一部を紹介しています)

2021年度介護報酬改定で「介護DX」の評価拡大

 介護現場でDXの取り組みが求められる背景の1つとして、今後訪れる働き手不足がある。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、15~64歳人口は2025年以降、減少スピードが加速し、2025年の7170万人から2040年には5978万人に減ると推計されている。一方、高齢化率は上昇し続け、特に介護サービスの需要が伸びる見通しだ。働き手不足が顕在化する中、現場の職員を疲弊させることなく介護を提供し続けるためにも、デジタル化による業務の効率化が重要となる。

 介護現場でのDXの取り組みは介護報酬でも評価されつつある。2021年度介護報酬改定では主要テーマの1つとして「介護現場の革新」が位置付けられ、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)などで見守りセンサーを導入した場合の「夜勤職員配置加算」(特養では入所定員などに応じて加算(I)~(IV):13~33単位/日)の要件が見直された。

 改定前の仕組みは、特養と短期入所生活介護の入所者・利用者への見守りセンサーの導入割合が15%以上の場合、夜勤職員の最低基準に加えて配置する人員は0.1人分少ない「0.9人」とされていた。改定後は見守りセンサーの導入割合の基準を15%以上から10%以上に緩和。さらに、「全ての入所者に見守りセンサーを導入」などの要件を満たした場合、「0.9人」を「0.6人」に緩和した。

 また、同様に「全ての入所者に見守りセンサーを導入」などの要件を満たす従来型施設の場合、夜間の人員配置基準を緩和する措置も導入(図1)。1日当たりの配置人員数が常勤換算方式に変更されるとともに、安全体制確保の観点から常時1人以上(入所者数が61人以上の場合は常時2人以上)配置することとされた。

図1 介護老人福祉施設(従来型)で見守り機器を全床に導入した場合の夜間の人員配置基準の緩和
(※クリックすると拡大表示されます)

 このほか、特養の「日常生活継続支援加算」、特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)の「入居継続支援加算」では、見守り機器やインカム、スマートフォン、介護記録ソフト等のICT等の複数のテクノロジー機器を活用した場合、加算の介護福祉士の配置要件が6対1以上から7対1以上に緩和された(図2)。厚労省が2020年度に実施した介護ロボットの導入効果に関する実証結果を踏まえたものだ。

図2 介護老人福祉施設の「日常生活継続支援加算」と特定施設入居者生活介護の「入居継続支援加算」の算定要件緩和
(※クリックすると拡大表示されます)

 ただし、運用ルールは厳しい。導入が必須となる見守り機器、インカム、記録ソフト等のうち、見守り機器は全居室に設置し、インカムは全介護職員が使用することが条件。利用者へのケアのアセスメント評価や人員体制の見直しも、PDCAサイクルで継続して行わなければならない。

 加えて、見守り機器やICT機器等を導入後、上記の要件で3カ月以上試行し、実際にケアを行う多職種の職員が参画する「見守り機器を安全かつ有効に活用するための委員会」(見守り機器等活用委員会)で安全体制やケアの質の確保、職員の負担軽減が図られていることを確認した上で届け出るものとされた。その後も委員会は3カ月に1回以上行い、夜勤職員の負担が増えていないかチェックする必要がある。

ICT化と併せてLIFE加算算定を目指せば増収に

 こうした介護現場でのICT活用を評価した加算は、収入面にどんな影響をもたらすのだろうか。参考までに、2021年度改定における特定施設入居者生活介護(介護付き有老ホーム)と介護老人福祉施設(特養)の収入変化のシミュレーションを示した(図3、図4)。あくまでも一例であり、試算の前提条件等は下記の別掲記事の書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』のケースを用いた点をご了承いただきたい。

図3 特定施設入居者生活介護の改定前後の収入試算例(書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より引用)
(※クリックすると拡大表示されます)

図4 介護老人福祉施設の改定前後の収入試算例(書籍『サバイバル時代の介護経営メソッド』より引用)
(※クリックすると拡大表示されます)

 この介護付き有老ホームでは医療ニーズの高い中重度者を受け入れるため、介護福祉士の配置やICT化による業務効率化にいち早く着手。新設の入居継続支援加算(II)の算定に当たり、テクノロジー活用による介護福祉士の配置要件の緩和措置(6対1以上から7対1以上)を受けた。さらに、LIFEへのデータ提出・活用を要件とする科学的介護推進体制加算、個別機能訓練加算(II)を算定。その結果、基本報酬と加算の収入がいずれも増加した。

 一方、特養でも夜勤職員配置加算や日常生活継続支援加算の算定に当たり、テクノロジー活用による職員配置要件の緩和措置を受けた。だが、基本報酬と食費が増収(注:食費のアップは2021年8月の基準費用額見直しによる)になった半面、加算が減収になり、全体では若干のプラスにとどまった。この特養の試算例では褥瘡マネジメント加算と排せつ支援加算を算定する前提条件としたが、科学的介護推進体制加算や自立支援促進加算など報酬単価の高いLIFE加算は算定していない。LIFEへのデータ提出・活用を要件とする一連の加算を積極的に算定しなければ、増収を望めない。

 2021年4月以降、こうしたテクノロジー活用による人員配置緩和を適用する介護施設は少数とみられるが、次の2024年度改定では緩和措置の他施設への対象拡大、さらなる要件緩和が行われる可能性が高い。ICT化などで先行する介護事業者の最新動向を注視しておくべきだろう。

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連載の紹介

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