2008/09/24
食道がん監修:京都大学医学部消化器内科准教授 武藤 学 | ![]() | |||
食道がんの人が咽頭がんや喉頭がんになる確率は15~20%です。なかには、食道がんと咽頭がんや喉頭がんが同時に起こっているのに、咽頭や喉頭にがんがないかどうかきちんと検査が行われていないケースもあります。既に喉にもがんがあるのに、食道がんの治療のことだけ考えて放射線を当てたりすると、その後、喉のがんの治療をするために放射線が使えなかったり、手術のときに縫合が難しくなったりすることもあるので、現段階で喉にもがんがないかどうか、担当医に確認しましょう。
もし、今のところ咽頭がん、喉頭がんになっていないようなら、再発や喉のがんを予防するために、食道がんと咽頭がんの危険因子であるお酒を止めること(禁酒をすること)が大切です。食道がんを経験した方が、咽頭・喉頭がんになるかどうかを決める最大の要因はお酒です。
特に、酒を飲んで赤くなるタイプの人は、アルコールを分解する段階で発生するアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすいので、飲酒によって食道がんや咽頭がんになるリスクが高まります。そのリスクは、赤くならない人に比べて、毎日1合(缶ビールなら350㏄)飲むと約5倍、毎日1.5合(缶ビール500cc)で約7倍、毎日2合(缶ビール700cc)で約50倍にもなることがわかっています。
あまり知られていませんが、WHO(世界保健機構)も、飲酒で赤くなるタイプのアジア人に対して、酒は発がん物質であると認定しているくらいです。一方、赤くならない人は1日1合ぐらいなら大丈夫ですが、毎日2合飲むと約45倍リスクが上がります。せっかく食道がんを治しても、飲酒を続ければ、発がん物質を飲んでいるようなものです。今まで毎日のように飲んでいればリスクはゼロではありませんが、飲酒で赤くなるタイプの人は結婚式の乾杯のときなど特別なときを除いて禁酒、赤くならない人も節酒を心がけましょう。