2008/07/22
乳がん監修:京都大学乳腺外科学教授 戸井 雅和氏 | ![]() | |||
乳がんの手術の副作用(有害事象)として最も一般的にみられるのが腕のむくみ(リンパ浮腫)です。リンパ浮腫は、わきの下のリンパ節の切除により、リンパ液の流れが悪化し皮下にリンパ液が溜まって生じます。目に見えるほどの腫れが生じる前に、腕がだるい、腕が疲れやすい、手がこわばる、物を落としやすくなった、肩や腕・背中がはれぼったいなどの自覚症状がでることがあります。
このリンパ浮腫、脇の下のリンパ節の切除を最小限に抑えることで発生や悪化の予防につながることが明らかになっています。そのため、初期の乳がんであり、脇の下のリンパ節への転移があまり疑われない場合は、センチネルリンパ節生検を受けるといいでしょう。
術前に化学療法を行う(術前化学療法)と7~9割で腫瘍の大きさが半減することが知られています。また、4割程度の患者さんでは、しこりが触っても分からなくなっています。手術後に比べて手術前に抗がん剤投与を受けた方が、しこりの大きさが小さくなることを実感できる、体力があるため抗がん剤の副作用に耐えやすいなどのメリットがあるといわれています。
センチネルリンパ節生検とは、センチネルリンパ節生検とは、乳房の手術中などに、放射線同位元素や色素をがん組織の近くに注入し、センチネルリンパ節を見つけて切り出し、このリンパ節内のがん細胞の有無を確認することです。センチネルリンパ節とは、乳がんからこぼれ落ちたがん細胞が最初に到達するリンパ節のことを指します(センチネルとは「見張り番」という意味)。センチネルリンパ節内にがん細胞が無ければ、リンパ節への転移は無いと判断し、それ以上のリンパ節郭清は不要となります。
ただし、現在、センチネルリンパ節生検は、保険診療となっていません。センチネルリンパ節生検を実施している医療機関かどうか、また、ご自身の乳がんは、センチネルリンパ節生検の対象となりえるものかどうか、医師に確認してみましょう。
また、手術後に、うでのむくみを感じたときは、腕の表面を手先から肩に向けて軽くさするようにマッサージする、腕をなるべく動かさないで安静にする、横になるときは腕をクッションの上にのせるなどが勧められています。鍼・灸はかえって症状を悪化させる危険性があるので行わないでください。
腕がむくみ(腫れ)、腕が上がらない、腕や肩が張る・痛む状態は、理学療法で治療します。マッサージや医療用サポーター(弾性スリーブ)、弾性包帯を使い、皮下に溜まったリンパ液をリンパ管に押し戻すことで症状を改善します。