2008/05/20
腎がん監修:京都大学医学部泌尿器科学教室教授 小川 修 | ![]() | |||
手術で完全に病巣を取りきれない、あるいは他の臓器に転移のある進行性腎細胞がんに対して、延命効果があることが証明されているのが、ソラフェニブ(商品名「ネクサバール」)、スニチニブ(商品名「スーテント」)という分子標的薬です。日本では、ソラフェニブが今年2月、スニチニブが4月に承認され、進行性腎細胞がんに対する治療の選択肢に加わりました。ソラフェニブは今年4月から発売が開始され、スニチニブも近々発売が予定されています。
これらの分子標的薬は、インターロイキン2やインターフェロンαを使った免疫療法よりも効果と奏功率が高く、経口薬で使いやすいという利点があります。日本より早くこれらの分子標的薬が承認された欧米では、進行性腎細胞がんの第一選択薬として定着しつつあります。
海外のデータですが、ソラフェニブはインターフェロンαなどを使った免疫療法(サイトカイン療法)に効果の無くなった進行性腎がんにも有効であることが証明されています。スニチニブは進行性腎がんの初回治療として用いた場合、無憎悪生存期間(腫瘍が大きくならずに安定している期間)中央値がインターフェロンα(無憎悪生存期間中央値5.1カ月)の2倍を超えると報告されています。
ただし、分子標的薬も夢の薬ではなく副作用もあります。ソラフェニブの場合、手足に水疱ができたり表皮がぼろぼろに剥げ落ちたりする手足症候群、脱毛、下痢、高血圧、アミラーゼやリパーゼなどの膵酵素(消化酵素で、急激に上昇しすぎると膵臓に炎症が起こる危険性がある)の上昇、スニチニブも手足症候群、骨髄抑制、下痢、膵酵素上昇、高血圧、皮膚障害、悪心といった副作用が報告されています。新しい薬なので、日本人にどういった副作用が起きやすいかはわかっていませんが、今後データが蓄積されてくるはずです。
腎細胞がんで手術では根治が難しいといわれている人は、この薬を使うメリットと副作用、費用について担当の医師によく聞くようにしましょう。