食道の一部と胃のすべてを切除した父。その食卓を預かる母が頭を痛めるのが、水分と塩分のコントロールです。本人の自覚がなければ、食習慣の変更はとても難しいものなのです。
信州文化は「漬け物つまみにたっぷり緑茶」
父は信州、長野の生まれ。子ども時代、田舎に遊びに行くと、まるで「わんこそば」のように緑茶を何杯も薦められるのが印象的でした。どうやらこれが父の生まれ育った食文化。そして、お茶うけの定番は漬け物です。夏なら胡瓜と茄子の塩もみ、冬には自家製のたくあん、野沢菜漬けといった具合です。
退院してすぐの頃、父は、あまり水分を取ることができませんでした。胃袋がなくストックできないためでしょう。しかし、食事の量が増えてくると同時に、お茶をたくさん飲む習慣が復活してきました。退院から1年10カ月となる2011年7月時点で、既に「1日に1.5リットル入りのポット4杯を空にしている」と母が嘆くほどの摂取ぶりです。
体に水分は必要ですし、冷たい物より温かい物の方がいいのは確か。でも、緑茶にはカフェインが含まれることが問題です。夜、父がなかなか寝付けないのは、運動不足とカフェインの相乗効果です。
物忘れについて専門医に相談をしたとき「夜の寝つきをよくするために、緑茶は午後3時までにしましょう」とアドバイスされました。父もなるほど、と納得したようで、それ以来、午後3時以降のお茶は、カフェインなしのほうじ茶を心がけています。
また、市販の漬け物は塩分が強く、添加物が使われていることが少なくありません。さらに食物繊維が多く、「良く噛まず、早食い」のクセが抜けない今の父には向きません。何度禁止しても買ってくる父に、母はうんざり。現在は、「新鮮野菜の塩麹もみ」を自作することで、折り合いを付けています。
水分を摂りすぎると、父は、お腹が緩くなる傾向があります。体内での栄養吸収を妨げる恐れがあるので、水分を適切にコントロールすることが理想なのですが…。わが家では、父の水分摂取コントロールはいまだに大きな課題です。
昼間、外で活動していれば、これほどお茶を飲むことはありません。
「ヒマだからお茶を飲むしかすることがない」
父の問題の原点は、ここにあるのでした。
ポイント
・15時以降は、ほうじ茶にしてカフェイン対策 |
---|
・漬物が食べたければ、市販品は避けて自家製を |