胃を切除した人が注意すべきことの1つが、「ダンピング症候群」。胃袋でプールできなかった内容物が、急激に小腸へと流れ込むことで起こる様々な不調です。父は1度しか経験がありませんが、その現場を目撃した母は、大変なショックを受けたようです。
胃がなくなってしまったのですから、以前よりも消化吸収の能力が落ちています。その自覚を持って、食べ方や食べる物、食後の行動に工夫をしていくことがダンピング症候群の予防につながります。
血糖値の乱高下が問題の原点
治療によって胃が小さくなった、あるいは胃を全摘出した人に起こりやすい不調がダンピング症候群です。ダンピング症候群は、早期ダンピング症候群と後期ダンピング症候群に分けられ、それぞれ以下のような症状が特徴です。
・早期ダンピング症候群(まれ):食事中から食後30分以内に発生
症状:動悸、発汗、めまい、おなかが鳴る、顔が紅くなる/蒼白になる、下痢など。
・後期ダンピング症候群:食後2~3時間頃に発生
冷や汗、脱力感、めまい、手や指の震え、集中力がとぎれるなど
後期ダンピング症候群には、「血糖値の急上昇/急降下」が関係しています。胃が小さくなった(無くなった)人の場合、食後、食べ物が一気に小腸に流れ込み、消化吸収が始まります。すると、血液中の糖分の量が急に上がってしまうのです。
食べ物が短時間で消化吸収されると、血糖値が急上昇し、膵臓からインスリン(血糖値を下げるホルモン)が大量に分泌されます。すると今度は、インスリンの作用で血糖値が急に下り、ダンピング症候群が起こるというわけです。
胃を切除した人は、原因こそ違いますが、糖尿病患者のように血糖値のコントロールが難しくなっています。だから不調が起こりやすいのだ、という自覚を持つことが第一歩。ただでさえ食べ物が小腸へ移動するスピードが速くなっていますから、ゆっくり食べることで少しずつ小腸へ送り出すことも大切です。
父の場合は、3度の食事とおやつで、約2時間ごとに何かしら食べ物を口にしていました。そのため、ダンピング症状とは縁がありませんでした。ところが、1度だけそれらしい症状に見舞われ、母がパニックになって電話を掛けてきたことがありました。
「近所のスーパーから車で帰るとき、お父さん、運転中に突然具合が悪くなったの。顔色が真っ青になって、指先が震えて、集中力が無くなって。家に帰ってからは、水っぽいものをバーッと吐いて、寝込んでしまった」
運転中の体調の急変で、事故などを起こさなかったのは幸いでした。こまめに栄養補給をしないと、そこまで具合が悪くなるものなのだ、と驚いた事件でした。
ポイント
・胃を切除した人には「血糖値コントロール」が大切 |
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・ゆっくり食べる、こまめに食べることが対策 |