父は、幸いなことに2クールの抗がん剤投与で患部が縮小、予定通り外科手術を受けることになりました。喉、胸、腹部の3カ所を切って、食道と胃を切除し、腸を使って再建するという大手術。心配するな、というのが無理な話です。そこで、当時、私たち家族がどんな気持ちだったか振り返ってみたいと思います。
ちなみに、手術は成功。2011年5月現在、父は元気に過ごしています。
手術の説明には予習が必須
2回目の抗がん剤投与が終わって退院したのが、2009年8月11日。抗がん剤の効果により食道がんの患部が小さくなっていると聞いて、私は、消化器内科医との面談を申し込みました。というのも「患部が小さくなったなら、切らない治療を選べるのでは?」と考えたからです。
面談の予約を取り、消化器内科医の意見を聞きました。説明では、内視鏡検査の画像や検査結果のプリントアウトが提示され、「食道がんの部位に放射線治療を行っても、その治療中に胃がんの方が進行する恐れがあります。ですから、やはり外科手術が第1選択ですね」とのことでした。
実は父も母も妹も、手術には納得しており、私だけが「手術以外の選択肢」にこだわっていました。しかし、医師の丁寧な説明に、ようやく手術を認めることができました。
後悔のないよう、状態に変化があればその都度、医師に説明してもらった方がよいと思います。
こうして2009年9月11日、手術のため父は再度入院しました。手術予定日は18日でしたが、術前の準備(各種の検査や、絶食、浣腸)に数日間を要するからです。そして手術前日に、手術について執刀医から詳しい説明を受けました。
家族は、この執刀医による説明の場に同席することが重要です。患者本人は大手術を前に不安を感じ、動揺しているものです。実際にどんな手術が行われるのか、その後に起こるかも知れない問題と対策について、冷静に話を聞ける人が付いていた方がよいのです。
そして、説明を受ける前に、手術内容の予習は欠かせません。私たちは、父のがん発覚時に購入した本を、もう1度じっくり読み返しました。食道再建の方法、身体の部位・名称を頭に入れておくためです。例えば、新しく作った食道は、胸腔内、胸骨後、胸骨前のどこを通すのか、といった内容です。
執刀医の説明は、家族全員で聞きました。医師は、腫瘍がある部位を図示しながら「ここからここまでを切除して、腸を使って再建します」と説明してくれました。一般的には8~10時間かかる大手術とのこと。
説明の途中で、参考書を手に、不安な点や分からないことを話し、一つ一つクリアにしていきました。