2009/11/17
『妻ががんになる以前、私は自分勝手な生活をしていました。しかし、妻の看病をするようになって、妻との距離がとても近くなりました。これまで知らなかった妻のことがいろいろと分かり、夫婦仲がとても良くなりました。人生に対する考え方が変わりました。つまり、以前より真剣に、人生について考えるようになったのです。』--介護経験者のBen |
介護者の多くは、がんの経験によって人生の意味を探すようになったと言います。自分の人生や大切な人との関係について考える時間を持つことで、悲しみを受け止めるなどの心の整理ができるだけでなく、達成感や人生の意味を見出すことにつながります。自分の考えを、大切な人や周囲の人たちに話したいと思うこともあるでしょうし、ただ書き留めたり、自分で録音したりするのもいいかもしれません。
大切な人と、以下のことを尋ねあってみてください。
・一緒に過ごした時間のうち、最も楽しかったり悲しかったりしたのはどんな時ですか?
・共に過ごした人生の中で、印象的な瞬間、最も重要な瞬間はいつでしたか?
・お互いから何を学びましたか?
・介護するようになったことで、人生にどのような影響がありましたか?
一度ショックや恐れを乗り越えると、人生を俯瞰して見ることができるようになるかもしれません。大切な人ががんになると、自分にとって大切なことを考え直そうとする場合があります。介護者の中には、前々から大切な人と一緒に計画していたことを実現する人もいますし、日常生活のあまり多くを変えずに、共に過ごす毎日の日々をもっと楽しむ人もいます。人生を、病気のためではなく、自分自身のために生きるということです。
『父ががんになってから、私たちが一緒に過ごす時間はとても増えました。そこで、これまで知らなかった父の一面を知りたくて、いろいろなことを尋ねるようにしています。聞きたいことを長いリストにして、毎日そのリストの中から少しずつ質問しています。これは私と父にとって、また家族のみんなにとっても本当に特別な時間です。』--介護経験者のDon |
大切な人と共に過ごした人生を振り返り、価値あるものにするには、以下のような方法があります。
・特別な思い出のビデオを作る。
・家族のアルバムを開いてみたり、写真を整理してみる。
・家族の歴史や家系を書いたり、図にしてみる。
・日々の気持ちや経験したことを日誌につづってゆく。
・スクラップブックを作る。
・友人や家族へのメモや手紙を書くのを手伝う。
・詩を読んだり、書いたりする。
・記念となる作品を作ったり、編み物をしたり、形見の装飾品を作ったりする。
・記念品や思い出の品など、贈り物を一緒に選ぶ。
・過去の楽しい話や、有意義な話を書き留めたり、記録したりする。
あなたも、患者も、家族も、自分たちの人生に喜びや意味を感じられることならば何でも実行すべきです。患者が「生成継承性文書(ethical will)」というものを作成する場合もあるでしょう。「生成継承性文書」とは、法的な文書ではありませんが、自分の大切にしてきた考えを伝えるために、価値観や、思い出、希望などを書き記しておくものです。さらに、人生で学んだ教訓や重要なことを書くこともあります。
●信仰とスピリチュアリティ
『私と同じ経験をしてきた人、している人を、私は最も尊敬します。介護ができるのは特別な人です。そして、その経験は人生を真によりよい方へ導いてくれます。』--介護経験者のSteve |
宗教に意味を見出だす人もいれば、それ以外の真理に目覚める人もいます。介護者の中には、なぜ自分がこのようなことを経験しなければならなかったのかと考える人もいれば、その経験を尊いことのように感じる人もいますし、その両者とも感じる人もいます。
スピリチュアリティの世界は非常に個人的なもので、その受け止め方も人によって異なります。スピリチュアリティに目覚めることで、新たな人生観が生まれ、役立つこともあります。日常生活にそのような視点を取り入れるには、以下のような方法があります。
・ 宗教やスピリチュアルな本を読んだり、心を癒す音楽を聴いたり、関連した内容のビデオやテレビ番組を見てみる。
・ 気持ちを高める引用句集を常に携帯する。
・ 祈りや瞑想をする。
・ 教区の人や、スピリチュアルな見識のある人と話す。
・ お寺、神社や教会に行く。
・ 美しいと思えるような場所や、穏やかな気分になれる特別な場所を見つける。
・ 病院のソーシャルワーカーやレクリエーションセラピストに、リラックスできる音楽を教えてもらう。
●スピリチュアルな問いかけをしてみましょう
今は、生と死の意味について考えることが多くなってきていることでしょう。あなた一人で、もしくは大切な人や親しい友人と一緒に、次のようなことを考えてみるといいかもしれません。
・なぜ、生まれてきたのか。
・いかに生きるべきか。
・死後はどうなるのか。
・介護者であることの意味は何か。
・ これまでを振り返って、人生について最も前向きだったこと、または否定的だったことは何か。
・ 介護者として、そして人としての自分の生き方に、信仰やスピリチュアルな視点がどのように役立ったか。
・ これまでの人生において、信仰やスピリチュアルな視点はどのように変化したか。
・ 神に対して、怒りなどの強い感情があるか。
・ 答えが見つからない問いが自分の中にあるとしたら、それはどのようなものか。
・ この時期、精神的な支えとなってくれるのは誰か、あるいは何か。
(監修:聖隷三方原病院緩和支持治療科 森田 達也)
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