2009/11/02
がんと診断される前からあった家庭内の問題は、今はさらに深刻なものになる可能性があります。介護しているのが小さな子どもでも、成人した子どもでも、親でも、また配偶者であっても同じことです。介護を始めることで、思いもよらない形で家族の感情や役割の変化を引き起こしてしまうことがあります。よく知らない親戚や、遠くに住んでいる親戚がちょくちょく現れたりして事態をさらに複雑にしてしまうこともあります。
この時期、家族内では、いろいろなことについて口論が起こりやすくなります。家族間で食い違いが多い意見には以下のようなものがあります。
・治療の選択肢について、またはそもそも治療を続けるべきか。
・いつホスピスケアを利用するのか。
・本人がどのような治療を望んでいるか。
・家族内における介護の負担の不均衡。
病人のために最善を尽くそうとしていても、反対する家族も出てきます。また、各自の考えや価値観があるため、話がまとまらず決定が難しくなります。患者家族が医療チームに相談して、家族で話し合いを持つ場を作ってもらうように頼むのは、この時期が多いようです。
『私の姉妹は、特効薬が出ると本気で信じています。いったいどうしたら、事態の深刻さを分かってもらえるのでしょうか。』--介護経験者のVerdell |
●家族の話し合い
がんの治療期間中を通して必要なのは、家族の話し合いです。がんが進行するにつれ、さらに重要になります。家族の話し合いの場では、医療チームと家族が一緒に、治療について話し合います。必要であれば、ソーシャルワーカーやカウンセラーに同席してもらうこともできます。大切な人が家族の話し合いの場を持ちたいと思っているかどうか、そして自分も同席したいかどうか、聞いてみてください。家族の話し合いでは、以下のようなことができます。
・医療チームに、治療の目的を説明してもらう。
・ケアに対する家族の要望を明らかにする。
・みんなが自分の気持ちを率直に表すことができる、自由な議論の場を作る。
・介護でしなければならない仕事をはっきりさせる。
何をすべきかということについて、身近な家族や友人が同意しないことがあります。治療の選択肢について口論になるのもよくあることで、介護の分担が均等でないと、言い争いになることもあります。みんなが、患者のために最善を尽くそうとしていても、反対する家族もでてきます。
もし必要なら、問題点を箇条書きにしてください。話し合いの最後には、医療チームの方にまとめてもらい、次へ進むための計画を立ててもらいましょう。
●ありがたくないサポートをどう断るか
『うちの近所の人は、子どもたちがベビーシッターと一緒にショッピングセンターにいたのを見て、父親が病気なんだから、店などに出かける時間があれば父親のそばにいるべきだと言ってきたのです。私は、何か悪い母親だと非難されているようでした。』--介護経験者のLori |
人の役に立ちたいと思って、必要以上に手を貸したがる人がいますが、それが迷惑な場合もあります。例えば、その助けをまだ必要としていない場合や、大切な人と二人きりで過ごしたいという時もあるでしょう。また、子供のしつけ、患者の治療、またその他のことに関して、いろいろと余計なアドバイスをしてくる人もいます。以下は、他の介護者の体験例です。
・「夫の親戚に、非常にやっかいな人がいました。彼女は遠くに住んでいるのに、私たちの決めることすべてにいちいち口出ししてくるのです。それがあまりにひどくなったので、私たちは主治医に頼み、1日中付き添っているわけでもない彼女が状況を理解することは無理だという旨を伝えてもらいました。はっきり言って、本当に迷惑でした。」
・「周りの人たちにとっては、私たちが何を最善と思っているのかはどうでもいいようで、むしろ治療を試すべきだと勧めるのです。それが原因で、治療を決めるのが必要以上に難しくなってしまいます。」
もし、あなたにとって迷惑な手助けを誰かが申し出たら、まずは、心配してくれていることに感謝したうえで、必要なときには相談にのってほしいと伝えましょう。手紙やはがきを送ってくれることや、祈ってくれること、お見舞いの言葉を伝えてもらうことは大歓迎と伝えるのもいいでしょう。
子どものしつけについて余計なアドバイスをしたがる人たちもいます。何もできないけれど心配しているという気持ちを示したいだけかもしれませんが、そういう人たちは病気のことでは口を出せないために、子どもの世話なら意見できると考えているのです。好意から出たアドバイスではあるのですが、あなたにとっては批判されているように感じられるかもしれません。
子どもたちのことで望まないアドバイスがなされた場合どう対応するかについては、あなたが決めることです。もし対応したくないならば、放っておくしかありません。もし、アドバイスが的を射たものであれば、カウンセラーや学校の先生に、どういう対処をすればいいか相談してみましょう。そうでない場合はその人たちにお礼を述べましょう。そして、子どもたちがこの大変な時期を乗り越えられるよう、親として必要な対策は行っていることをしっかり伝えて理解してもらいましょう。
(監修:聖隷三方原病院緩和支持治療科 森田 達也)
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