2009/08/18
●がんの経験から生きることの意義を考える
多くの介護者は、がんをきっかけに人生観が変わります。スピリチュアリティ、人生の目的、何が自分にとって一番大切かを深く考えるようになるかもしれません。がんという経験をよいものとしてとらえると同時に、否定的にとらえてしまうことも自然なことです。治療を終えた後、なぜ自分たちが、がんと共に生きて行かなければならなくなってしまったのか理解できず苦しんだり、なぜこのような人生の試練に耐えなければならなかったのかと苦悩するかもしれません。
がんが個人の信仰や宗教に対する意識にどのように影響するかは人それぞれ異なります。宗教に背を向けるようになる人もいれば、宗教に救いを求める人もいます。がんになって自分の信仰に疑問を抱くようになることも少なくありません。しかし、答えを求め、自分なりの意義を探ることでがんに向き合えるようになる人もいます。
多くの介護者にとって、信仰、宗教、スピリチュアリティといったものは、がんの治療を終えた後で、人生に立ち向かう際の力の源になるものです。信仰によって人生の意義、がんという経験の意義を理解できるようになったという人も多いのです。信仰や宗教を通じて、自分たちと似たような経験や人生観を持つ人たち、または手助けしてくれる人たちとのつながりをより強いものとすることができるかもしれません。一部の人々にとって宗教は、がんに立ち向かい克服するための重要な糧となっているという調査結果もあります。
次のようなことが、信仰や宗教を通して安らぎや生きる意味を見つけるための方法としてあげられます。
・超越者に見守られているような気持ちになり、落ち込んだ気分を癒やしてくれるような書物を読む。
・祈ること、または瞑想することで、怖れや不安を軽減する。
・聖職者にあなたの心配や恐れについて話す。
・宗教やその他のスピリチュアリティを高める会合に参加し、新たな人と出会う。
・教会で同じような経験をした人たちと話をする。
・教会でがんのような慢性の病気と向き合って生きる人たちのための救いになるものを探す
●自分のための時間をつくる
もしあなたが介護のために自分のことを後回しにしてきたのなら、そろそろ自分をいたわる方法を考えるよい時期です。休息をとり心や魂を充電することが、この時期を乗り切るのに役立ちます。次のようなことを考えてみてください。
・好きなことを再び始める。
・他の人に手伝ってもらう方法を考える。
・これまでとは異なった友人との付き合い方を考える。
●他の人に手伝ってもらう
もうこれ以上他人に迷惑をかけたくないという思いから、他の人に対し、自分たちは順調にやっているから手助けは要らないと言いたくなるかもしれません。しかし、おそらくあなた自身も大切な人も共に疲れていて、治療後の新たな生活にまだ慣れていないことでしょう。自分たちがまだ落ち着かない状態であることを他の人たちに伝えて、皆ができそうな手助けを具体的に伝えておくとよいでしょう。できれば、以下の人たちによる援助を引き続きうけられるような体制を維持するようにしましょう。
・家族および友人。
・信仰の仲間。
・近所の人。
・同僚。
・市民団体のメンバー。
自分にはどのような支援が有用なのか考えてみましょう。他の人に何か手伝ってもらいたいですか?それともただ誰かにそばで話を聞いてもらいたいのでしょうか?あなたが何をしてもらいたいのか明確にすれば、支援する人たちも協力しやすくなるでしょう。
●自分のためにできるちょっとしたこと 毎日、どんなささいなことでもいいので、自分自身のために何かをする時間を作りましょう。次のようなことをしてみてはどうでしょうか。 ・昼寝。 ・運動やヨガをする。 ・趣味を続ける。 ・ドライブに出かける。 ・映画を見る。 ・庭仕事をする。 ・買い物に出かける。 ・電話をかけたり電子メールや手紙のやりとりをする。 時間があってもリラックスできない場合もあるかもしれません。そういった際には深呼吸や瞑想などが良いかもしれません。 |
●新たな支援者のサポートを受け入れる
治療中、距離をおいていた家族、友人、隣人、同僚たちも、治療後はあなたの手助けをしたいと思っているかもしれません。それが家族の一員であっても、友人、聖職者、カウンセラーやサポートグループのメンバーであっても、がんのつらい経験をしていない人たちと話すことは、プラスになるかもしれません。
自分の気持ちや感情に対処する方法を見つけることは大切です。誰かと話をすることがその助けになるのであれば、他の人と交流を持つことは大事なことです。特に、大切な人には言えないようなことについて話したい場合はなおさらです。あなたの気持ちや怖れについて本心を語れる相手をみつけましょう。
また一方で、他の人から支援を得られない場合があることも理解しておく必要があります。その人たちは、手助けをすることに気後れしているのかもしれませんし、日常生活に戻りつつあるあなた方に、これ以上支援は要らないと思っているのかもしれません。あるいは、時間がない、もしくは彼ら自身の人生に何かが起きているなど、個人的な理由があるのかもしれません。
●サポートグループに参加する
『最低でも週に1~2回、自分と同じ境遇の人たちと話をすることが、私には必要です。』--介護経験者のVince |
サポートグループは直接顔をあわせて集まるほか、電話や、インターネットを介して集まるものもあります。サポートグループの人たちによって、今起こっていることを別の視点でとらえることができるようになったり、立ち向かってゆくためのアイディアが得られたりします。そうして、あなたが一人ぼっちではないことを気づかせてくれるでしょう。
サポートグループでは、自分たちの気持ちや経験について話し合ったりして、同じような問題を抱えている人とアドバイスを交わし、助け合います。サポートグループに行っても、ただ話しを聞くだけというのを好む人もいます
このような外部の支援を利用してみたいと思っていても、あなたの居住地域にそのようなグループがない場合は、インターネット上のサポートグループを探してみましょう。そのようなサポートグループのおかげで救われたと話す介護者もいます。
●一時的な休養をとるための援助を探す
あなたは、すでに一時休養(レスパイト)サービスを利用したことや、利用を検討したことがあるかもしれません。大切な人の治療が終わっても、介護の負担はまだ大きいことでしょう。あなたが一時的な休養をとれるよう支援してくれるヘルパーは、大切な人に付き添っていてくれるので、その間少し休んだり、友達に会ったり、ちょっとした用事をしたりと、好きなようにその時間を使えます。このようなヘルパーは有料の場合とボランティアの場合があります。また、患者を抱え上げてベッドや椅子に移動させたりするなど身体的な負担がかかる介護も手助けしてくれます。もし、こういったサービスを受けたいと思ったら、以下のような準備をするとよいでしょう。
・時々外部の人に家に手伝いに来てもらうことについて、患者本人と話し合いましょう。既に一時休養ヘルパーを利用している場合は、もうしばらく継続することについて相談しましょう。
・治療終了後はどのような介護上の援助を頼むことができるかを一時休養ヘルパーに尋ねておきましょう。
・友人や、ヘルスケアの専門家、もしくは地域の高齢者支援機関から紹介してもらいましょう。
一時休養のための援助は以下のいろいろな人、あるいは機関から受けることができます。
・家族、友人、隣人。
・職場の同僚。
・信仰の仲間。
・政府の機関。
・NPO(非営利団体)
援助を必要とする際に、どの手段を利用したとしても介護者として失格などでは決してありません。 |
●カウンセラーと話す
時には押しつぶされそうになり、いつもサポートをしてくれる人たち以外の人と話をしてみたくなることもあるかもしれません。そのようなときは、カウンセラーや心理士、あるいはその他の精神保健の専門家などに相談してもいいですし、聖職者に相談することが助けになるという介護者もいます。大切な人やあなたのまわりの人たちには話せないような話題でも、こういった人たちであれば話せるかもしれませんし、今まで思ってもいなかったような方法で自分の気持ちを表す方法を見つけたり、物事に対処する方法を学んだりすることができるかもしれません。
●自分が受けた支援を、今度は必要としている人たちに提供する
治療が終了したあと、これまで自分たちが受けてきた支援を、今度はがんと闘っている他の人たちに自分たちから提供する番だと感じる介護者も多くいます。地域の人を支援したり、サポートグループに加わったり、またはがん関連の団体でボランティアを行うことにエネルギーを注ぐ人もいます。多くの場合、他の人の生活に貢献することで、自分自身の困難も乗り越えられることがあります。がん患者の生活を改善するための方法に関する詳細は、NCIパンフレット「前向きに歩もう-Ways You Can Make A Difference in Cancer」をご請求ください。
●日記をつける
日記をつけることは、否定的な考えや気持ちを和らげる効果があると多くの介護者たちは報告しています。自分の考えや気持ちを文字に表すことにより、自分が経験していることの意味を理解できることがあります。どのようなことでも自由に書いてみましょう。最も強いストレスを感じたことや悩んでいることを書いてもかまいません。また、親切な近所の人のことやストレスから開放された日のこと、そして誰か別の人と過ごした時間についてなど、あなたを元気にし、楽しくさせるようなことを書くのもいいでしょう。
●前向きになれるものを見つける
生活の中で、いいことを見つけるようにすると気分が晴れると介護者たちは言います。また、自分ではどうすることもできないようなことではなく、自分でできることに注意を向けるとよいという声もあります。日々、介護していてやりがいを感じたことを思い起こすようにしましょう。その他にも、美しい日暮れの景色や、抱擁、美味しい食事、またはあなたが聞いたり読んだりした楽しい話など、その日に経験した『いいこと』を思い出して、気分を前向きにするよう心がけるとよいでしょう。
●笑ってみましょう
どのような状況においても、笑わずに過ごす必要はありません。実際、笑いは健康的なことです。笑うことで緊張がほぐれ、気分もよくなります。面白いコラムを読んだり、コメディー番組を見たり、陽気な友達と話をしたり、または昔あった面白いことを思い出してみるのもいいでしょう。つらい状況でもユーモアのセンスを失わずにいることが、介護に上手に対処する方法の一つでもあるのです。
『母が乳がんと診断されるまでは、自分自身の健康についてあまり考えたことはありませんでした。でも、今はとても心配です。なぜなら、わたしの祖母も乳がんだったからです。私自身のことだけでなく、10歳になる娘のことも心配です。一緒に検査を受けるべきでしょうか?』--Jeanne
●自分自身のがんのリスクについても知っておきましょう 血縁者ががんになると、将来自分もがんになるのではないかと特に心配になるかもしれませんが、ほとんどのがんは遺伝性ではありません。乳がんや大腸がん、前立腺がんといった最も一般的ながんの5~10%のみが遺伝によるものです。しかし、これは主治医に相談すべき重要なことです。 医師からは、家族がどういうがんであったのか、また具体的に家族のだれががんになったのかについて尋ねられるでしょう。特定のがんに罹患した親族の数が多ければ、そのがんにかかるリスクは高まります。予防および検査については主治医に相談してください。 がんの多い家系である場合は、遺伝子検査を受ける必要があるかどうか主治医に相談してみましょう。検査結果を知ることにより、検査やがん検診の回数を増やすことができるという理由から知りたいと思う人もいます。 |
(監修:名古屋市立大学医学部 明智 龍男)
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