2010/07/27
最後の数時間のケア
最後の数日間から数時間に予測される出来事を知っておくことで、患者さんの家族が感じる苦痛が軽減されます。
ほとんどの人は死の間際にみられる徴候を見慣れていません。予測されることを知っておけば、愛する人の死に対する覚悟ができ、ストレスや混乱を軽くすることができます。医療提供者は、最後の数時間に患者さんに起こりうる変化について、そして、そのときに愛する人に対して何ができるかについて、患者さんの家族に情報を提供することができます。
最後の数日間から数時間になると、何かを食べたり飲んだりしたいという願望がなくなることがしばしばあります。
最後の数日間から数時間になると、何かを食べたり飲んだりしたいという願望がなくなることがしばしばあり、出された食べ物や水分の摂取を患者さんが拒否することもあります。患者さんの家族には、氷のかけらを口に含ませたり綿棒で口の中や唇をぬぐったりすることで、それらの乾燥を防ぐことができます。食べ物や飲み物を無理に与えようとすると、患者さんを不快にしたり、窒息を起こさせたりする可能性があります。家族が患者さんに対する愛情を示すには、マッサージなどの別の方法もあります。
死を間近に控えた患者さんは呼びかけに反応しないことがあります。
内に引きこもってしまい、多くの時間を寝て過ごすようになることもあります。質問しても返答が遅くなったり、まったく返答がなくなったり、錯乱しているようにみえたり、周囲の環境にほとんど関心を示さなくなったりします。ほとんどの患者さんは、しゃべれなくなった後も音を聞くことはできます。たとえ患者さんが返事をしない場合でも、家族が患者さんの体に触れ、話しかけ続けるようにすれば、苦痛をいくらか取り除くことができます。
死を間近に控えた患者さんでは、多くの身体的な変化がみられるのが一般的です。
終末期の患者さんでは、以下のような身体的な変化がいくつか現れてきます。
◎疲労感や虚弱感を覚える。
◎尿の量が少なくなり、色が濃くなる。
◎手や足に染みができ、冷たくなり、蒼白になる。毛布を用いて患者さんの体温を維持することができます。電気毛布やアンカは使用すべきではありません。
◎心拍数が増減したり、不規則になったりする。
◎血圧は通常低下する。
◎呼吸が不規則になり、非常に浅い呼吸、短時間の呼吸停止、深く速い呼吸が混在してみられる。
患者さんやその家族によっては、臨終の際に重要となる文化的または宗教的信念や習慣をもっていることがあります。
患者さんが亡くなった後も、患者さんの家族や介護者がしばらくその場にいることを望む場合があります。この時期に患者さんや家族にとって重要となる特定の習慣や儀式がある場合もあります。具体的には、死に対処するための儀式、患者さんの遺体を扱う儀式、遺体に最後の処置を施すための儀式、故人に敬意を表すための儀式などがあります。患者さんが亡くなった後に行いたい習慣や儀式があるなら、患者さんと家族は医療チームにそのことを知らせておくべきです。
葬儀社への連絡など、患者さんが亡くなった後に必要となる事柄については、医療提供者、ホスピススタッフ、ソーシャルワーカー、霊的指導者などに説明してもらうことが可能です。
悲嘆と喪失
悲嘆は、愛する人を失ったことに対する正常な反応です。喪失に対処できないと感じている人には、訓練を受けた専門家による悲嘆カウンセリングや悲嘆療法が助けとなることがあります。