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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2020/04/10

第8回

胃がん術後補助化学療法の有用性を初めて確立したACTS-GC試験

 外科手術で胃がんを所属リンパ節と共に全て取り除いたと判断しても、一定の割合で術後に再発が見られます。胃がんの原発巣から血液の流れによる、リンパの流れによる、あるいは腹腔内へ散布された微小ながん細胞の転移があり、それが手術後に大きくなって再発と診断されます。そこで手術後に抗がん薬を投与して再発を抑制しようとする試みを術後補助化学療法と呼びます。

 日本では1960年代から多くの術後補助化学療法の臨床試験が行われて来ましたが、統計学的に有意に優れた治療法は見つかりませんでした。米国では放射線治療との併用(INT-0116試験による)、欧州では術前化学療法と術後化学療法の組合せ(MAGIC試験による)が標準治療として行われていましたが、いずれも対照群である胃がん手術単独の治療成績が日本と比較して余りにも低いとして(日本ではD2郭清を標準治療としているが欧米ではそうではない)、日本では評価されていませんでした。

 S-1は進行再発胃がんの治療で画期的な効果が報告され、後に進行再発胃がんの標準治療になりますが、補助化学療法においても、ACTS-GC試験でStage II、IIIの胃癌を対象として手術+S-1群と手術単独群を比較しました。1059例が日本全国の109施設から登録され、予定された中間解析でS-1群の有意な生命延長効果が報告されました。後に5年生存率の優位性も報告され、Stage II、III胃がんでは手術後にS-1を1年間投与することが標準治療として推奨されることになりました。

(N ENGL J MED 2007より引用)

藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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