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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2020/03/27

第7回

化学療法耐性の進行再発胃がんに対する免疫製剤ニボルマブの有用性を示したATRACTION-2試験

 がん治療の選択肢の1つに免疫療法があります。ヒトが本来持っている免疫力でがん細胞を排除できるとの考えで、1970年代の後半には、がんに対する免疫活性を高める効果があるとしてOK-432(ピシバニール)やPSK(クレスチン)などの非特異的免疫製剤が胃がんにも使用されていました。しかしその効果は限定的でした。一方、ヒトの免疫監視機構の研究から、リンパ球の1つであるCD8陽性T細胞にがん胞を死滅させる効果があることがわかりました。そこで、患者のCD8陽性T細胞を体外で大量に培養して用いる細胞免疫療法などが行われていますが科学的検証がなされておらず、民間のクリニックでの高額医療費が問題になっています。

 一方、がん細胞には免疫監視機構から逃避する仕組みがあることがわかってきました。がん細胞の表面にはこの仕組みを発現させるPD-L1やPD-L2といった分子があり、またT細胞には免疫チェックポイント分子であるPD-1が発現していることを京都大学の本庶佑教授が発見し、ノーベル賞を受賞しました。

 ニボルマブはT細胞のPD-1とがん細胞表面のPD-L1やPD-L2との結合を阻害して、T細胞のがん細胞に対する攻撃効果を回復、活性化して効果を発揮します。ニボルマブは手術療法、化学療法、放射線療法にほとんど効果が無かった、皮膚がんの悪性黒色腫で画期的な成果が報告されました。

 胃癌では二次治療あるいは三次治療などに耐性になった患者さんを対象として、ニボルマブとプラセボ(偽薬)を比較するATRACTION-2試験(二重盲検試験)が国際共同試験として行われました。その結果、有意差をもってニボルマブ群の生命延長効果が検証されました。現在、胃癌治療ガイドラインでは、二次治療あるいは三次治療などに耐性になった患者さんに対してニボルマブを用いることを推奨しています。しかしながら、薬剤が高額であることに加えて、効果がある人と効果の無い人の指標(バイオマーカー)が未知であることから、より良い治療法について引き続き研究が続けられています。

(Lancet 2017より引用)

藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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