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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2020/02/21

第6回

進行再発胃がんの二次治療においてS-1の継続投与が推奨されない根拠となったJACCRO GC-05試験

 2000年代の初めに進行再発胃がんの一次治療を決めるために行われていた4つの無作為比較試験、JCOG9912試験(5-FU vsシスプラチン+イリノテカン vs S-1)、SPIRITS試験(S-1 vs S-1+シスプラチン)、TOP-002試験(S-1 vs S-1+イリノテカン)、START試験(S-1 vs S-1+ドセタキセル)は、ほぼ同時期に症例集積が進行中でした。後に進行再発胃がんの一次治療は、SPIRITS試験によりS-1+シスプラチンになりましたが(連載第2回を参照)、それ以前から一次治療後に進行した患者への二次治療は何が良いかが臨床上の大きな疑問(Clinical Question)でした。

 当時、実臨床において、S-1+シスプラチン、S-1+イリノテカン、S-1+ドセタキセルのいずれもが、従来汎用されていた5-FU+シスプラチンに比べて明らかに効果が優れていることを経験していたからです。筆者は、一次治療でS-1が用いられた症例においても、二次治療でS-1の継続投与が有用だろうという考えでした。その理由として、S-1は従来の薬剤より極めて効果が高かったこと、一次治療でS-1を用い二次治療で再度S-1を用いた症例において有効例が見られたこと、胃がんではないが進行再発大腸がんの標準治療であるFOLFOX療法(5-FU、ロイコボリン、オキサリプラチンの併用)、FOLFIRI療法(5-FU、ロイコボリン、イリノテカンの併用)ではどちらを一次治療に用いても、二次治療で5-FU、ロイコボリンを再度併用して効果を発揮していた事が挙げられます。

 ところが、学会での討論では多くの研究者が、一次治療にS-1を用いた場合には二次治療でのS-1の継続投与に反対でした。そこで、このClinical Questionを解決すべく行ったのがJACCRO GC-05試験です。一次治療においてS-1単剤、S-1+シスプラチンあるいはS-1+ドセタキセルのいずれかを用いて進行した症例を対象として、二次治療でS-1+イリノテカン vs イリノテカン単剤の臨床研究を立ち上げました。

 結果は完全にnegativeで、むしろS-1継続投与に毒性が強いことが分かりました。しかしながら、Clinical Questionを検証するためには、きちんとした第III相試験が必要であり、JACCRO GC-05の成果は進行再発胃がんの二次治療においてS-1の継続投与は推奨されないという、以後の胃がん化学療法の基本となりました。

(Annals of Oncology 2015より引用)

藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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