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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2020/01/17

第5回

パクリタキセル+ラムシルマブが進行再発胃がんの二次治療となったRAINBOW試験

 がんの増殖に欠かせないのは、腫瘍に栄養を供給する新しい血管です。がんは自ら栄養血管を新しく作る(血管新生)化学的なシグナル(血管内皮増殖因子、Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF)を出します。新しく出来た血管が成長中のがん組織に酸素と栄養を与えることで、がんは大きくなります。化学的なシグナルが血管の内皮にある受容体と結合すると細胞内にあるシグナルが動き始め、新しい血管を作るようになります。新生血管阻害薬は、VEGFそのもの、あるいは血管内皮細胞表面の受容体と結合することによって化学的なシグナルを阻害する、分子標的治療薬の1つです。

 大腸がんでは、ベバシズマブ(Bevacizumab)というVEGFを直接ターゲットにした血管新生阻害薬が、標準的治療として化学療法と併用されています。胃がんでも一次治療の化学療法にベバシズマブを併用する無作為比較国際共同試験(AVAGAST試験)が2007年から行われましたが、ベバシズマブの有用性を示すことは出来ませんでした。

 その後登場したラムシルマブ(Ramucirumab:Rmab)は、ベバシズマブと異なり血管内皮増殖因子の受容体であるVEGF-2をターゲットとした分子標的治療薬です。胃がんでは一次治療が効かなくなった患者さんに、二次治療としてパクリタキセルの3週に1回投与が行われていました。

 2010年から開始されたRAINBOW試験は国際共同試験で、パクリタキセルを減量して3週間毎週投与し1週休薬する投与法に、ラムシルマブを併用する群(Rmab群)と偽薬(外見では判別不可能な全く効果の無い偽の薬:プラセボ)を併用する群(プラセボ群)を、無作為比較試験で検証しました。その結果、Rmab群の全生存期間が9.6カ月、プラセボ群の全生存期間が7.4カ月となり、統計学的に有意にRmab群の生命延長効果が示されました。また、無増悪生存期間もRmab群で有意に良好でした。

 RAINBOW試験の結果により、進行再発胃がんの二次治療はHER2陽性、陰性に関わらず、パクリタキセル+ラムシルマブが胃癌ガイドラインの推奨治療となりました。また、副作用などでパクリタキセルの使用が困難な患者さんには、ラムシルマブの単独投与も認められています。

  (LANCET Oncol 2014より引用)


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
 これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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