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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2019/12/27

第4回

HER2陽性胃がんに対するトラスツズマブの有用性が示されたToGA試験

 以前から乳がんでは、細胞の表面にがん細胞の増殖を促すHER2という蛋白質が強く発現している患者群の存在が知られていました。トラスツズマブ(Trastuzumab:Tmab)は、このHER2タンパクを狙い撃ちにして働きを抑制する分子標的治療薬です。乳がんではHER2タンパク陽性の患者さんにおいてトラスツズマブが効果を発揮し、進行乳がんや術後補助治療にも標準治療として用いられています。そして胃がんにもHER2タンパクを過剰発現するタイプがあることが分かり、トラスツズマブの有用性を検証したのがToGA試験です。

 ToGA試験は胃がんにおいて日本で最初に行われた国際共同試験で、2005年から24か国122施設で実施されました。それまで海外で承認された薬剤を日本で用いる場合には、日本で承認を得るために再度の臨床試験が必要でしたが、国際共同試験を行うことにより、新薬を用いるまでのタイムラグが無くなることになります。

 対象となったのは、胃がん組織の免疫染色(immunohistochemistry)でHER2タンパクが陽性(2+)、強陽性(3+)、もしくは蛍光in situハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization:FISH)法を用いてHER2陽性と診断された、進行再発胃がんの未治療例です。HER2タンパク発現があるか無いかをスクリーニングした3665人の胃がん患者さんの22%がHER2陽性と診断され、これらの患者さんにトラスツズマブの有用性が期待されました。

 ToGA試験では、当時欧米の進行再発胃がんの標準治療であったカペシタビ(Capecitabine:Cape)+シスプラチン(Cisplatin:CDDP)、あるいは5-FU + CDDPを化学療法群(n=296)として、これにトラスツズマブを加えたTmab群(n=298)との無作為比較試験が行われました。その結果、Tmab群の全生存期間の中央値が13.8カ月、化学療法群の全生存期間の中央値が11.1カ月となり、統計学的に有意にTmab群の生命延長効果が示されました。これによりHER2陽性胃癌の一次治療としてCape + CDDP + Tmabが承認されました。

 その上、試験の後解析で、HER2強陽性(3+)あるいはHER2陽性(2+)でFISH陽性の患者群では、Tmab群の全生存期間の中央値が16.0ガ月であることが同時に報告されました。この結果から日本の胃癌治療ガイドラインでは、HER2が3+もしくはHER2が2+でFISH陽性に対して、一次治療としてCape + CDDP + Tmabを推奨しています。

  (LANCET 2010より引用)


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
 これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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