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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2019/11/29

第3回

S-1とイリノテカン、ドセタキセルの併用療法を検証したTOP-002試験とSTART試験

 1999年に発売されたS-1は、経口投与にかかわらず従来の抗がん剤に比べて画期的な効果を示し、2000年代の初めには臨床の現場で汎用されるようになっていました。そしてS-1に他の薬剤を併用することで更なる効果を得ることを目的として、S-1+シスプラチンをS-1単剤と比較するSPIRITS試験が2002年から、S-1+イリノテカンをS-1単剤と比較するTOP-002試験が2004年から、S-1+ドセタキセルをS-1単剤と比較するJACCRO GC-03試験(START試験)が2005年から開始されました。

 S-1+シスプラチンがJCOG9912試験とSPIRITS試験の結果、標準治療となったことは前回解説しました。

 ほぼ同時期に行われていたTOP-002試験は、S-1とイリノテカンの併用(164例)とS-1単剤(162例)を比較し、S-1+イリノテカンの生存期間の中央値は12.8カ月、S-1単剤の生存期間の中央値は10.5カ月でしたが、残念ながら統計学的にS-1+イリノテカンの優位性は示されませんでした。この結果、進行再発胃癌の1次治療としてS-1とイリノテカンの併用は勧められないと結論づけられました。ただし、奏功率(がんが縮小した患者の割合)はS-1+イリノテカンが41.5%、S-1単剤が26.9%であり、明らかにS-1+イリノテカンが優っており、この試験以降、胃癌治療ガイドラインに、イリノテカンは単剤で3次治療以降の重要な薬剤として掲載されています。

(Gastric Cancer 14:72-80 より引用)


 またSTART試験は、S-1とドセタキセルの併用(316例)とS-1単剤(323例)の比較で、韓国との国際共同試験として行われました。初回の解析では統計学的な優位性が示されませんでしたが、消息不明例が多く、可能な限りの消息不明例を解消した後解析で、S-1+ドセタキセルの生存期間の中央値は12.5カ月、S-1単剤の生存期間の中央値は10.8カ月となり、S-1とドセタキセル併用の優位性が確認されました。ただし後解析の成績であったため、胃癌治療ガイドラインでは、標準治療であるS-1とシスプラチンの併用が困難な場合に条件付きで第1選択となりました。その後、S-1とドセタキセルの併用はStage III胃癌術後補助化学療法の臨床試験(JACCRO GC-07試験)において有用性が報告されており、これについては補助化学療法の試験の解説で説明します。

(J Cancer Res Clin Oncol 2013 より引用)



藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
 これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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