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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2019/10/18

第1回

日本における進行再発胃がんの標準治療を最初に確定したJCOG9912試験

 大規模な臨床研究にはニックネームが付いています。たとえばJCOG9912試験のJCOGとは日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group)の略称で、全国のがんセンターなど、がんの研究専門施設を中心とした臨床試験グループを示します。9912とは、1999年に開始されたJCOGグループの12番目の臨床試験であることを意味します。

 JCOG9912試験は、手術で取り切れない進行再発胃がんの標準治療を決定する、非常に重要な試験となりました。この試験が始まる前、日本において、汎用されている治療はあったとしても、臨床研究で検証された標準治療はありませんでした。最も汎用されていた治療は代謝拮抗薬の5-FUと白金製剤シスプラチン(cisplatin)の併用療法で、5-FU単独に比べてがんを縮小させること(奏効率)は優れていましたが、肝心の生存期間を延長することは出来ませんでした(JCOG9205試験)。

 2004年に改訂された「胃癌治療ガイドライン・第2版」では、化学療法に関して、「胃癌に対する標準的化学療法として、フッ化ピリミジン(5-FU等)とcisplatin(CDDP)を含む化学療法が有望であるが、国内外の臨床試験成績からも現時点で特定のレジメンを推奨することはできない」と記載されていたのです。

 そこでJCOGグループは、5-FUの単独治療を、出発点となるコントロールと位置付けました。それをシスプラチンと新しく登場したイリノテカン(irinotecan)の併用療法の効果と比較する臨床研究を行い、シスプラチン+イリノテカンは、それまで行われていた治療法に比べて毒性は強いものの、高い奏効率、長い生存期間があることを報告しました。

 同じ頃、フッ化ピリミジン系の新しい経口製剤であるテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(開発コードS-1)が開発され、単剤での高い奏効率ならびに長い生存期間が報告され、汎用され始めていました。JCOGグループでは進行再発胃がんの標準治療を明らかにするために、5-FU単独と比較してシスプラチン+イリノテカンの優越性(生命延長効果が優れている)、S-1の非劣性(S-1の効果が若干劣っていても経口剤という簡便性で患者の利益になると仮定する)を検証する無作為比較試験を2000年11月に開始しました。これがJCOG9912試験です。

 2006年1月までに704例が登録され、2007年3月に解析が行われました。生存期間の中央値は5-FU単独群10.8カ月、シスプラチン+イリノテカン群12.3カ月、S-1単独群11.4カ月でした。

     (LANCET Oncology 2009より引用)

 優越性を検証したシスプラチン+イリノテカン群の生存期間は5-FU単独群に比べて長いものの、統計学的な有意差を得ることが出来ませんでした。一方、S-1群の5-FU単独群に対する非劣性が証明されました。その結果、S-1単独療法が進行再発胃癌の標準治療として位置づけられることとなったのです。

 そしてほぼ同じ頃、S-1単独療法とS-1+シスプラチン併用療法とを比較した、SPIRITS試験の結果も明らかになりました。



藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「 NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
 これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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