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治療の根拠は何ですか? 胃がんの治療を変えた臨床試験

2019/10/4

はじめに

ステージ4の胃がんと診断され、化学療法を勧められました。

何を根拠に治療が行われるのですか?

 「胃癌治療ガイドライン」には、切除不能・進行再発胃癌に対して推奨される化学療法(レジメン)が明記されています。いずれもエビデンスレベルの高い臨床研究の結果から推奨されたレジメンです。

 まず、あなたの胃がん組織のHER2(ハーツー)蛋白が陽性か陰性であるかどうか(存在するかどうか)で、トラスツズマブ(Trasutuzumab: Tmab)という薬剤の適応になるかどうかが決まります。HER2蛋白は胃がんの増殖を促進する蛋白で、トラスツズマブはこのHER2蛋白を狙い撃ちする治療薬です(分子標的薬と呼ばれます)。HER2蛋白が陽性と診断されたら、カペシタビン+シスプラチンとトラスツズマブの3者併用療法が推奨されます。この治療法についてはToGA試験という国際共同試験が行われ、その結果ガイドラインで推奨されるようになりました(ToGA試験については連載で説明します)。

 HER2蛋白が陰性と診断された場合には、S-1+シスプラチン療法(SP療法)が推奨されます。これはJCOG 9912試験SPIRITS試験という2つの試験の成果から、世界に先駆けて日本で進行再発胃癌の標準治療になりました(JCOG 9912試験とSPIRITS試験については連載で説明します)。また、カペシタビン+シスプラチン療法(XP療法)もSP療法と同様に推奨されています。これは日本も参加した国際共同試験(ToGA試験やAVAGAST試験)でXP療法が対象群に採択され、日本人における有効性と安全性が確認されているからです。

 もし最初の治療(1次治療)が効かなくなった場合には、HER2陽性胃癌、HER2陰性胃癌ともに2次治療としてパクリタキセル+ラムシルマブ療法が行われます。1次治療で用いられたS-1とカペシタビンは共にフッ化ピリミジン系薬剤の仲間で、2次治療では1次治療で用いられた薬剤の継続使用は効果が期待できないので(1次治療でS-1に耐性となった症例に2次治療でS-1を継続の可否を検討したJACCRO GC-05試験については連載で説明します)、2次治療ではフッ化ピリミジン系薬剤とシスプラチンは用いられず、作用機序の異なるタキサン系のパクリタキセルと血管新生阻害薬ラムシルマブ(分子標的薬)を併用します。これはRAINBOW試験という国際共同試験の成果から推奨されるようになりました(RAINBOW試験については連載で説明します)。

 2次治療に耐性となった場合には、3次治療としてニボルマブ単独治療が推奨されます。ニボルマブは免疫チェックポイント阻害薬で、ATTRACTION-2試験において2次治療に耐性となった胃癌患者さんに有効と認められました(ATTRACTION-2試験については連載で説明します)。

 この他にも、「胃癌治療ガイドライン」で推奨されるレジメンがあります。推奨されるためには臨床試験が適格に行われ、論文化されていることが条件になっています。次回以降、代表的な臨床試験について解説して行きます。

推奨される化学療法レジメン(胃癌治療ガイドラインより)

条件付きで推奨される化学療法レジメン(胃癌治療ガイドラインより)

藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構」(通称JACCRO)に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。
 これまで、がんナビでは「がん臨床研究のABC-Z」という連載を行って来ました。臨床研究とはどのようなものか、この連載を通じて臨床研究への参加が増えることを期待して執筆して参りました。続きとなるこの連載では、実際の臨床研究にはどのようなものがあるか、行われた臨床研究はどのように計画され、成果はどのように実際の臨床に役立っているのかを、胃がんの治療についてお話ししたいと思います。

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