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がん臨床研究のABC-Z

2019/07/05

第26回

非劣性試験とは何ですか?

 臨床研究に慣れている医師でも、「非劣性試験とは何ですか?」と患者さんから質問されると、説明に苦労することがあります。私は、「新治療は標準治療に比べて、効果は許される範囲内で劣る可能性があるかも知れませんが、それを上回る利点があると考えて、この臨床試験は計画されました」と説明しています。

 通常、臨床研究では新治療が標準治療より優れていることを検証します(優越性試験と言います)。しかしながら、臨床研究では優越性試験以外にも「効果=ベネフィット(利益)」と「安全性=リスク(不利益)」を秤にかけた研究が行われます。例えば、「新治療は標準治療と比較して効果は同じだが、副作用は少ない」、「新治療は標準治療と比較して効果も副作用も同じだが、他のメリット(安い、注射ではなく飲み薬、投与間隔が長いなど)がある」などが考えられます。この場合、「効果は同じ」であることが前提条件になります。副作用が少ないなどの他のメリットがあっても、生存期間などの効果が悪ければ本末転倒になるからです。

 しかしながら、前提条件である「効果は同じ」であることを確認して(同等性試験)他のメリットを証明するためには、膨大な症例数の設定が必要になることが分かっています。第22回「 臨床研究への参加人数はどのようにして決まるのですか?」で解説しましたが、標準治療と新治療の効果の差が大きいほど必要症例数は少なくて検証可能ですが、効果の差が小さいと必要症例数は多く必要になり、ましてや同等(=効果の差が無いこと)を検証するためには膨大な症例数が必要になります。

 そこで考えられたのが、「非劣性試験」です。効果は許容範囲内で劣るかも知れないがメリットがあるとすると、同等性試験に比べ少ない症例数で臨床研究が可能になります。許容範囲をどの程度にするかが問題になり、許容範囲の幅が大きいと少ない症例数で試験が組めますが、倫理的観点から余り大きな幅は許されません。日本で行われた代表的な非劣性試験としては、大腸癌の標準治療の1つである5-FU/leucovorin/CPT-11 (FOLFIRI) 療法で用いられる5-FU注射剤を、経口剤のS-1に代えることで煩雑な持続点滴を回避できるS-1/CPT-11(IRIS)療法と比較する試験があり、成功しました。その他にも多くの非劣性試験が行われています。

 次回は「95%信頼区間とは何ですか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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