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がん臨床研究のABC-Z

2019/4/26

第23回

「臨床研究に参加されなくても、診療ガイドラインに沿った治療を行います」と説明同意文書に書かれていますが、診療ガイドラインとは何ですか?

 現在、胃がんや大腸がんなどほとんどの「がん」において「診療ガイドライン」が制定されています。それでは診療ガイドラインとは何でしょうか?

 医師は目の前の患者さんの治療を行う場合には、対象となる患者さんにとって最良の方策を考えます。その際に用いられるのがevidence based medicine(EBM)「根拠に基づく医療」と呼ばれる方法です。EBMでは「目の前の患者さん」に「この治療を行うと」、「別の治療を行なった場合」と比べて「どのような結果になるか」(問題の定式化と言います)を、論文などから様々な情報を収集し、得られた情報の内容が正しいか、信頼して良いかを判断し(情報の批判的吟味と言います。次回「エビデンスレベルとは何か?」で解説します)、目の前の患者さんに適用して行きます。

 私たちは常にEBMに従って医療行為を行うように心がけています。しかしながら、全ての医療行為について、情報を収集したり、批判的吟味を加えたりするには膨大な時間が掛かり現実的ではありません。また、同じような病態の患者さんに、多くの医師が最良の方策は何かを考えています。そこで考案されたのが「診療ガイドライン」です。

 例えば胃がんの場合には胃癌学会が中心となりガイドライン委員会を組織し、「胃癌診療ガイドライン」を作成しています。ガイドラインではそれぞれの病期、病態について、発表された論文に基づいて科学的に吟味した上で、それぞれの病期、病態について推奨される治療法が書かれています。現在最も信頼のおける治療法がガイドライン治療と言って良いでしょう。また、図や表を用いて、目の前の患者さんの病態に合わせ推奨される治療法が明確に分かるようになっています。

 ガイドラインが出来る前は、それぞれの医師が上司、同僚に聞いたり、論文を読んだり、経験に基づく治療が最善とされて来ましたが、ガイドラインが出来てからは日本全国どこの医療機関でもガイドラインの推奨する治療を行うようになっています。

 それでは全てガイドライン通りの治療をしなくてはいけないのでしょうか?主治医は目の前の患者さんに最良の治療を考えます。従って、主治医の先生があなたの全身状態や生活習慣などを考慮して、ガイドラインを参考にしながら最良の治療を提示します。そのためガイドラインが推奨する治療とは異なることがあるかも知れません。

 ガイドラインに推奨されている治療(標準治療)より、さらに良い成果を求めて行われるのがガイドライン治療を対照として行われる臨床研究です。

 次回は「エビデンスレベルとは何でしょうか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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