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がん臨床研究のABC-Z

2019/3/15

第21回

無作為比較試験とは何でしょうか?

 臨床研究では標準治療と新治療の比較が行われます。比較するには、過去に行われた標準治療の成績と同じく過去に行われた新治療の成績を比べてみる(後向き臨床研究と呼ばれます)、過去に行われた標準治療の成績とこれから行おうとする新治療の成績を比べてみる(第II相試験と呼ばれます)、あるいは標準治療と新治療の成績をこれから同時に比べてみる(第III相試験または無作為比較試験と呼ばれます)など様々な方法があります。

 比較を行う際、標準治療が行われたグループと新治療が行われたグループの患者さんの状態(背景因子と呼ばれます)に大きな差があっては、正しい比較とは言えません。比較する成績に影響を及ぼす背景因子は臨床研究の内容により異なりますが、例えば性別、年齢、全身状態(日常生活の制限の程度)、がんの進行度、遠隔転移の部位、合併症の有無などが挙げられます。

 例えば、比較しようとする過去の標準治療にがんの進行度が進んでいた人が多く含まれていた、高齢者が多く含まれていた、全身状態の余り良くない人が多く含まれていたのに対し、これから行おうとする新治療には進行度が比較的進んでいない人が多く含まれる、若年層が多く、比較的元気な人が多い場合には、もし新治療の成績が良好であったとしても正しい比較が行われたとは判断出来ません。過去の標準治療の成績を用いた後向き臨床研究や第II相試験の弱点は、比較するもの同士の背景因子が必ずしも一致しないことです。

 無作為比較試験(第III相試験)では、研究に参加して頂いた患者さんを、標準治療を行うグループと新治療を行うグループにランダムに振り分けて治療を行います。こうすることで標準治療群と新治療群の背景因子が揃うことを期待するからです。それでも必ずしも背景因子が揃わない場合を排除するために、成績に重大な影響を与える因子(例えば、進行度、年齢など)を予め決めておき、それぞれの因子毎に患者さんを振り分けることも行います(層別化と言います)。このようにして行われる無作為比較試験は、背景因子が揃うことで究極の臨床研究とされていて、科学的な価値(エビデンスレベルと呼ばれます)が高く評価されます。

 次回は「臨床研究への参加人数はどのようにして決まるのですか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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