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がん臨床研究のABC-Z

2019/1/25

第18回

多施設共同研究とは何でしょうか?

 多くの施設が集まり、協力しながら症例を集めて行く研究を、多施設共同研究と呼びます。

 がんに対する新しい治療の効果を検証するために、時に1000例以上の症例数を必要とする事があります(必要症例数をどのように決めるかについては別に解説します)。1つの施設で1000例を集めようとすれば20年もかかるようでは、時代遅れになり正しい研究の成果を得ることは出来ません。そこで100施設に研究への協力を依頼すれば、1施設あたり10例の症例登録で比較的短期間で目的とする症例数を得る事が可能になります。

 例えば、胃癌術後補助化学療法におけるS-1の有用性を検討したACTS-GCでは、1000例の予定必要症例に対し109施設が参加しました。同じく胃癌Stage IIIを対象とした術後補助化学療法におけるS-1/タキソテールの有用性を検討したJACCRO GC-07では、1100例の予定必要症例に対し137施設が参加しました。いずれも1施設あたり10例を参加登録して頂ければ良いことになり、短期間に研究を終了し結果を公表する事が出来ました。このように多くの施設が参加して行われる臨床研究を多施設共同研究といいます。

 これ程大規模な研究でなくても、40~50例程度が必要な臨床研究においても多施設共同研究が行われます。1施設では年間2~3例しか臨床研究に該当する症例が無くても、多施設であれば短期間で結果が分かるからです。

 一方、多施設で研究を行うことによる短所もあります。臨床研究に不慣れな施設が共同研究に参加すると、決められた治療法通りに治療が行われなかったり、有害事象の報告が遅れたりします。その為、多施設共同研究を行うには、研究代表者を選び、研究の事務局を設置、有害事象に対応する効果安全性委員会を組織し、研究の実施要綱を作成して、治療法の統一、有害事象の定義や報告方法を決めておくなど、様々な工夫が行われています。

 このような多施設共同研究を組織的に行っている主な消化器がんの共同研究グループとしては、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、 がん集学的治療研究財団(JFMC)、日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)、北海道消化器癌化学療法研究会(HGCSG)、西日本がん研究機構(WJOG)、中部臨床腫瘍研究機構(CCOG)、大阪消化管がん化学療法研究会(OGSG)、九州消化器化学療法研究会(KSCC)などがあり、いずれも重要な成果を報告しています。これ以外にも大学病院や地域を主体とし、関連病院を含めた多くの研究グループが組織され多施設共同研究が行われています。

 次回は「臨床研究に参加したら、効果が少ないと予想される群で治療することになりました。どうしたら良いでしょうか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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