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がん臨床研究のABC-Z

2018/10/12

第12回

臨床研究法とは何でしょうか?

 臨床研究法は「国民の臨床研究に対する信頼の確保」を主な目的として、2018年4月から施行されています。法律ですので違反すると罰則もあります。

 この法が施行されるまで、私達は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従って臨床研究を実施していました。厚生労働省から、倫理指針を遵守しないと将来は罰則を伴う法制化もありますよとの警告がありましたが、多くの研究者は法制化に反対していました。

 ところが、高血圧治療薬ディオバンの臨床研究において、ディオバンを製造販売している製薬会社社員の直接的な研究への関与が報告されました。この製薬会社はディオバンの臨床研究に関係した5つの大学に11億円以上の寄付金を出していました。そこで製薬会社に都合の良いデータを発表していたとされ、その結果それぞれの大学が出していたディオバンに関する5つの論文の撤回が行われました。これらの論文の成果は製薬会社がディオバンの広告材料として使っていたために、国民の信頼を大きく損ねることになりました。この事件以外にもいくつかの似たような事例が報告されました。そしてこの事件をきっかけとして、臨床研究に関する法整備の必要性が大きく唱えられ、臨床研究法が制定されることとなりました。

 臨床研究法の対象となるのは、主に
・製薬企業などから資金提供を受けて実施される臨床研究
・未承認ならびに保険適応外医薬品を用いた臨床研究
であり、これらは「特定臨床研究」と呼ばれ、実施には様々な条件が付加されています。
・厚生労働大臣の認定を受けた「認定臨床研究審査委員会」での承認を受けること(従来は研究代表者の所属する施設の倫理委員会でした)。
・特定臨床研究は実施計画書を厚生労働大臣に提出すること。
・特定臨床研究は厚生労働省が整備したデータベースに登録すること。
・研究実施中の質の管理を行なうこと(モニタリング・監査)。
・患者さんへの健康被害などの補償を行うこと。
・製薬会社と研究者の利害関係を明らかにすること(利益相反)。
 重大な違反については懲役3年以下、もしくは300万円以下の罰金が科されることになりました。

 実際に特定臨床研究を計画実行するには、以前より数倍の事務手続きが必要になることが分かりました。しかしながら、私達は臨床研究法を遵守して、国民の信頼を取り戻せるような臨床研究を目指したいと考えています。

 次回は「研究の質の担保、透明性の確保とは何ですか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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