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がん臨床研究のABC−Z

2018/9/28

第11回

臨床研究の科学的合理性とは何でしょうか?

 一昔前までの倫理委員会では患者さんの人権保護が主に審議されていました。そのため臨床研究の説明文書の分り易さや説明文書の「て、に、を、は」などの訂正に時間を費やす事も多く見られました。現在の倫理委員会の審査では、これらに加えて科学的な観点が重要視され審査するようになりました。偏りのある集団での成績の場合など、臨床研究に参加しても明らかに成果が出ないことが科学的にわかる場合、参加して戴いた患者さんにとっては不利益になるからです。

 例えば、「新規の薬剤Aは標準薬Xより効果がある」とする仮説を作ります。この仮説を証明(検証)するために行われるのが臨床研究です。

 科学的に検証するためには、まず標準薬Xの正しい効果の成績はどの程度か、新規薬剤Aの期待される(予測される)効果の成績はどの程度かと、予測している数字を示さなくてはなりません。

 次に、新規薬剤Aが標準薬Xより優れていることを検証する為の研究方法(研究デザイン)を決めます。この例の場合、2つの研究デザインが考えられます。1つは第II相試験と呼ばれ、新規薬剤Aのみを患者さんに用いて効果を検討します。過去の標準薬Xの成績と比較して統計学的に優れていれば、新規薬剤Aは標準薬Xより効果があると結論付けられます。もう1つの研究デザインは第III相試験と呼ばれ、標準薬Xの成績は過去の成績で現在はもっと効果が上がっているかも知れないので、新規薬剤Aと標準薬Xを同時に無作為に(サイコロを振るように)2群に分けて成績を比較します。科学的に最も価値が高いのは第III相試験ですが、第II相試験に比べて症例数が多く必要になって来ます(後の連載で説明しますが、必要症例数の設定が研究の成果を最も左右します)。

 上記以外にも、患者さんの選定条件(適格条件)、結果を判断する方法(統計学的な検定の方法)、2群に分けた場合患者さんを割付ける方法、実際の治療法などの科学的妥当性・合理性が問われます。

 次回は「臨床研究法とは何でしょうか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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