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がん臨床研究のABC-Z

2018/08/17

第8回

臨床研究に参加しようと思いますが副作用が心配です。

関本克宏

 抗がん剤はがん細胞だけに作用するのではなく、正常に分裂している健康な細胞にも影響を与えてしまいます。臨床研究では、治療中にGrade 2以上の有害事象があれば薬剤の投与を休む、Grade 3の有害事象があれば薬剤の投与量を減らすなどと事前に決めておきます。

 がんは活発に細胞分裂を繰り返して大きくなり、周囲の臓器に浸潤したり、転移をしたりします。多くの抗がん剤はがん細胞の分裂の過程(細胞回転といいます)に作用して分裂を阻止するように設計されています。抗がん剤が効果を示すと、がん細胞の分裂が止まり、腫瘍が小さくなり、ごく稀に消失してしまう場合もあります。

 しかしながら、抗がん剤はがん細胞だけに作用するのでは無く、正常に分裂している健康な細胞にも影響を与えてしまいます。通常、がん細胞は正常細胞より活発に分裂を繰り返していますが、正常細胞でも骨髄細胞、消化管粘膜、髪の毛、爪などは、がん細胞ほどでは無いにしてもやはり活発に分裂を繰り返しています。これらの正常細胞の分裂が阻止される事によって、様々な副作用が起こります。

 骨髄細胞の分裂が阻害されると、白血球減少、血小板減少、貧血が起こります。消化管粘膜は目に見えませんが常に入れ替わるために活発に分裂していますので、粘膜がダメージを受けると、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などを起こしてしまいます。毛母細胞がダメージを受けると脱毛が起こります。これらの副作用は抗がん剤の種類によって異なります。

 全く副作用の無い抗がん剤が理想的なのですが、そうなると効果も期待出来なくなります。抗がん剤は他の一般の薬剤と異なり、安全に使用できる幅(安全域)が狭いのが特徴です。

 細胞回転に関わらない副作用もあります。例えば、白金系の抗がん剤(シスプラチン)は腎毒性が強く、腎毒性が起こらない別の白金系抗がん剤(オキサリプラチン)では手の痺れなどの神経毒性を起こす事があります。アンスラサイクリンと呼ばれる抗がん剤は心毒性があることが知られています。

 以上が一般的な抗がん剤の副作用ですが、最近、分子標的薬と呼ばれる新薬が開発されました。この薬剤は細胞回転に作用せず、細胞に直接作用して効果を発揮します。そのため、従来には無かった高血圧、ざ瘡(ニキビ)などの新しい副作用が発現するようになりました。さらに新しい免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤では、多岐に渡る副作用が報告されています。

 これらの副作用(有害事象)を客観的に評価するために、「有害事象共通用語基準(通称:CTCAE)という万国共通の有害事象のグレード分類が用いられています。
Grade 1:軽症;症状が無い、治療を要さない
Grade 2:中等症;有害事象の治療が必要
Grade 3:重症または医学的に重大であるがただちに生命を脅かす程ではない;入院を要する
Grade 4:生命を脅かす;緊急処置を要する

 具体的に、例えば白血球減少では、Grade 1: <-3,000/mm3、 Grade 2: <3,000-2000/mm3、Grade 3: <2,000-1000/mm3,、Grade 4: <1000/mm3などと、具体的数値で決められています。

 臨床研究では、治療中にGrade 2以上の有害事象があれば薬剤の投与を休む、Grade 3の有害事象があれば薬剤の投与量を減らすなどと、事前に決めておきます。
 
 次回は「臨床研究の倫理指針とは何でしょうか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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