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がん臨床研究のABC-Z

2018/7/18

第5回

治験への参加を勧められましたが、「治験」とは何でしょうか?

 「治験」も臨床研究の1つです。製薬会社が新しい薬剤の承認を得るため、あるいは適応拡大(例えば乳がんには既に使用が認められている薬剤を胃がんにも使えるようにする)などの臨床研究を、特に「治験」と呼びます。

 新しい薬がヒトに使われる前に、候補となる新薬はがんを培養した細胞や動物を用いて有効性や安全性を確認します。これを非臨床試験あるいは前臨床試験(フェーズ0試験)と呼びます。前臨床試験で有効性と安全性が確認された新薬候補が、初めてヒトを対象とした次のI~Ⅳ段階の臨床研究(治験)に進みます。

 第Ⅰ相試験(フェーズ1)では、主にヒトにおける薬物動態(薬がどのように吸収され、どこに多く分布され、どのように分解代謝され、排泄されるか)、副作用などの安全性の確認と、次に行われる第II相試験での薬剤の投与法を決定します。

 一般の新薬の場合は健康人のボランティアを募集して第Ⅰ相試験を行いますが、抗がん剤の場合には、標準治療に無効で他に有効な治療法が無い患者さんから自由意志での参加を募ります。最近新しく開発された免疫チェックポイント阻害薬という新薬の第Ⅰ相試験では、他に有効な治療法が無い患者さんに多くの有効例が出ましたが、通常の場合、治験への参加は全くのボランティアであり、次世代の患者さんのためへの協力ということになります。参加者には心から感謝したいと思います。

 第II相試験(フェーズ2)では、がんの種類ごとに薬剤の有効性と安全性の検証が、比較的少数例の患者さんに参加していただいて行われます。抗がん剤に関しては、以前はフェーズ2の成績でも新薬としての承認申請が可能でしたが、現在は胃がん、大腸がん、乳がんなど主要ながんについては、次の第III相試験の成績が求められています。

 第III相試験(フェーズ3)では、新規薬剤とすでに販売され標準治療になっている薬剤とを、無作為に分けて比較します。また、新規薬剤と偽薬(プラセボ)の比較を行うこともあります。

 ここまでの成績により効果と安全性が確認されれば、厚生労働省に承認申請を行い、承認されると新規薬剤を製造し販売することが出来ます。しかし現実には、多くの薬剤が第III相試験の結果から承認申請を断念しています。

 新規薬剤が販売された後に行われるのが第Ⅳ相試験(フェーズ4)で、市販後臨床試験とも呼ばれます。新薬が発売されると多くの患者さんに使用されますが、それまでの治験の段階では把握出来なかった新たな副作用がないかを、1000例~3000例単位の多数例で検討します。新薬が承認される際にこのフェーズ4試験が義務づけられ、結果は厚労省に報告されます。

 次回は「臨床研究の研究説明文書とはどのようなものでしょうか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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