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がん臨床研究のABC-Z

2018/6/18

第4回

がんの臨床研究にはどのようなものがあるのですか?

 がんの臨床研究で新治療と標準治療の「効果」と「安全性」が比較されます。臨床研究は新薬を開発する際に製薬会社が行う治験に準じて、フェーズスタディー(Phase study)と呼ばれ、第I相からIV相の4段階に分けられて進められます。

 第I相試験では、新しい治療の安全性を標準治療の過去の安全性データと比較します。第II相試験では、主に新治療の効果を過去の標準治療の効果ならびに安全性と比較します。第III相試験では、新治療と標準治療を無作為に分けて効果(生存期間)と安全性を比較します。第IV相試験は新薬が承認されてから行われる治験の一部で、製薬会社に義務づけられており、多数の症例により新薬の安全性(新たな有害事象)を過去の標準薬などの安全性と検討します。

 臨床における「効果=ベネフィット(利益)」と「安全性=リスク(不利益)」を秤にかけて比較した場合、その結果は大きく分けて以下の7つになります。
(1)新治療は標準治療と比較して 効果は大きいが、副作用も大きい
(2)新治療は標準治療と比較して 効果は小さいが、副作用も小さい
(3)新治療は標準治療と比較して 効果は小さいが、副作用は大きい
(4)新治療は標準治療と比較して 効果は大きいが、副作用は少ない
(5)新治療は標準治療と比較して 効果は同じだが、副作用は少ない
(6)新治療は標準治療と比較して 効果は同じだが、副作用は大きい
(7)新治療は標準治療と比較して 効果も副作用も同じだが 他のメリットがある

 この中でリスク・ベネフィットを考えて倫理的に問題があるのは(3)と(6)でしょう。副作用が標準薬より大きいのに効果が期待出来なければ問題があります。一方、最も理想的なものは(4)になります。(1)はToxic Newと言われ、許容範囲の副作用であれば、効果を期待してして、臨床応用されます。最近のほとんどどの新治療がこれに当たります。(2)(5)は Less Toxic Newとして高齢者などに、(7)は安価であるとか、外来通院で可能などが該当し、研究内容により妥当と考えられます(非劣性試験と呼ばれますが、後日詳しく説明します)。

 臨床研究ではまず「仮説」を作ります。自分ではこうなるだろうと思っても、臨床研究の成果が出るまでは分らないので、とりあえず「仮説」です。臨床研究を別の表現にすると「臨床研究とは仮説を検証すること」になります。上記の(1)、(2)、(4)、(5)、(7)のどれかに当てはまる仮説を作らなければなりません。その仮説は、PICO( Patient:患者さん、Intervention:介入、Comparison:比較、Outcome:結果)と呼ばれるシンプルな文章にする必要があります。例えば「胃癌Stage II、 IIIの患者さんに、術後に」(P) 、「S-1を1年間投与すると」(I)、「手術だけ行った患者さんに比べて」(C)、「生命延長効果がある」(O)となります。

 実際の臨床の場でもPICOを用いた思考を推薦しています。「目の前の患者さんに」(P)、「新治療を行うと」(I)、「標準治療より」(C)、「効果がある」(O)とするとシンプルになります。

 次回は「治験への参加を勧められましたが、治験とは何でしょうか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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