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がん臨床研究のABC-Z

2018/6/7

第3回

臨床研究に参加する患者さんの利益と不利益は?

 臨床研究では新しい治療と標準治療との比較が行われますが、無作為化比較試験で新治療群ではなく、標準治療群に割り振られた場合でも患者さんの不利益にはなりません。なぜなら、標準治療は過去の臨床研究の結果、現在最も良い治療と認定されている治療法だからです。

 残念ながら、臨床研究の成果は参加された患者さんの直接の利益にはならず、同じような病態の次世代の患者さんの利益になります。また、参加されても謝礼金が出る事もなく、全くのボランティアと言って良いでしょう。最終的に新治療が良い場合もありますが、差がない場合やむしろ悪い場合もあります。また、新治療は効果が期待出来る場合もありますが、副作用も従来の標準治療より強いことがあることも理解しておいた方が良いでしょう。

 臨床研究には、最新の治療に興味がある施設や医師が参加します。参加した医師は臨床研究を適正に遂行するために作成された実施計画書に従って治療を行います。実施計画書には研究に至る研究の背景、つまりなぜこの研究が必要なのかと、具体的な研究方法が詳細に記載されています。

 また、参加される患者さんを守るための様々な工夫が行われるようになっています。患者さんの、年齢、全身状態の指標、主要な臓器機能や同意の取得の確認などの「適格条件」、妊娠、授乳の有無、アレルギーの有無や過去の病気の有無がある場合には研究に参加できないとする「除外条件」をクリアしないと、参加が出来ないようになっています。治療によって起こるいろいろな有害事象(副作用)については、有害事象の度合いによって薬剤の減量の方法、薬剤の投与を延期する休薬の方法が細かく決められています。常日頃から臨床研究に参加している施設や医師は、日常診療でもこのような患者さんを守る方法を熟知していると考えて良いと思います。

 一方、臨床研究に参加すると採血やエックス線検査などの検査の回数が増加することがあり、患者さんの負担が通常の診療に比べて大きくなることもあります。担当医師の負担も同時に大きいのですが、患者さんの安全を守るため、患者さんとのコミュニケーションを取るためにも必要です。

 臨床研究の経験が少ない施設や医師では、ガイドラインに示された標準治療を行っても、副作用を恐れて治療薬剤の減量を行いやすい、有害事象が起こるとすぐに治療を中断する等、結果的に患者さんにとって不利益になるようなことが見受けられます。私達日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)は、臨床研究に不慣れな施設や医師にも参加を呼びかけ、「臨床研究の裾野を広げる」ことをスローガンにしています。

 次回は「がんの臨床研究にはどのようなものがあるのですか?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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