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がん臨床研究のABC-Z

2018/5/28

第2回

なぜ臨床研究が必要なのでしょうか?

 新しい薬剤(抗がん剤)は、製薬会社が主導する臨床研究(治験と言います)を行い、厚労省に申請を行い、承認を受けた後に市販され、世の中に出てきます。

 現在は、胃がん、大腸がんなどの新薬は、無作為化比較試験で標準治療と比較して優位性が認められた場合にのみ承認されますので、承認後には新薬が新たな標準治療になります(例:胃がんにおける免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブなど)。

 しかしながら以前は、薬剤の効果と安全性を検証する第II相試験と言われる研究で一定の水準をクリアすれば、新しい抗がん剤が新薬として承認されていました。胃がんに関しても、承認された薬剤がたくさんあって、進行再発胃癌では1990年代の前半まで、どの薬に一番効果があるのかが正確には分かりませんでした。主治医は経験的に良いと考えていた抗がん剤を患者さんに応用していたのです。

 そこで国立がん研究センターを中心とした「日本臨床腫瘍研究グループ(通称JCOG)」は、当時最も効果が大きかったシスプラチン・イリノテカン併用療法、新規抗がん剤であるティーエスワン(S-1)、従来から長く汎用されたために標準治療に準じて用いられていた5-FU注射剤の持続点滴療法の、3つの治療法の比較を行いました。進行再発胃癌に対する科学的に裏打ちされた画期的な大規模臨床研究の始まりでした。その結果、ティーエスワンが胃癌に対する最初の標準治療薬になりました。

 臨床の現場では目の前の患者さんの治療をどうするか迷う場面があります。そのような場合には、先輩医師や同僚に相談する、教科書や論文を読むなどして、その内容を吟味して治療法を選択しています。それでもどちらが良いか分らないという疑問が生じた場合に、両者を比較する臨床研究が行われます。このような臨床研究の積み重ねにより、標準治療が決められ、治療法診療ガイドラインが作成されました。診療ガイドラインがあれば、日本全国どこの施設でも治療に迷う事はありません。患者さんは臨床研究に裏打ちされた、最も良い治療を受ける事が可能になりました。

 次回は「臨床研究に参加する患者さんの利益と不利益は?」です。


藤井 雅志(ふじい まさし)氏
特定非営利活動法人日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)臨床試験委員長
前日本大学医学部医学部消化器外科学 教授、1975年日本大学医学部卒

 連載で「臨床研究」に関する情報をお届けしたいと思います。
 簡単な自己紹介を致します。消化器外科医ですが、主にがんの化学療法を担当しています。現在「NPO法人日本がん臨床試験推進機構:通称JACCRO」に所属して、主に消化器がんの臨床研究を行っています。私が医師になった昭和50年代は外科医が主にがんの化学療法を行っていました。胃がんばかりでなく、乳がん、大腸がんの化学療法も外科医の守備範囲でした。後になって「外科医の片手間の化学療法」と揶揄されるようになったのですが、当時は目の前にいる切除不能胃がん、再発胃がんを診ていただける腫瘍内科がまだ無い時代でしたので、われわれ外科医が化学療法をせざるを得ませんでした。現在でも多くの外科医が癌の化学療法の一端を担っています。

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