このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

新着一覧へ

がん診療の現場から

2020/10/09

「With cancer」を極めるのに必要なことは?

 青森県三沢市に“レアな”焼き鳥屋さんがいました。その店は、レバーが抜群においしく、ほとんどレアで出されるのが評判のお店でした。レバー以外の注文は、正確には伝わらない。店の中は、
「ビール」「冷蔵庫」
「酒」「冷ならそれ!燗は自分でやって」
「何本のんだか覚えておいて。ビールはキャップをこっちに」
と声が飛び交う。
 常連でない客は当然びっくりするお店でしたが、常連が注文を聞いて正確に給仕するほどで、どんぶり勘定だが気の良いと評判な店でした。

 その「おやじ」に、ある日、膵臓がんが見つかりました。手術はできない状態だと判断されました。そこで、放射線治療と化学療法が開始されました。その治療が効果を発揮して、よく癌をコントロールすることができました。その結果、まもなく痛みが薄らいで退院となり、外来通院できるところまで回復しました。「おやじ」は、あろうことか80歳代で20歳以上年下の女性と結婚した果報者でした。

 さて、
 退院したのは良かったのですが、まもなく心筋梗塞を起こして緊急入院となりました。「おやじ」は、心臓カテーテル治療などでこれも克服しました。

 がん治療と心筋梗塞後治療のための通院が続いていますが、「まだまだ死んでいられない、かみさんもいるし」と元気な様子です。そこで「店を早く開けなよ」と声を掛けると、「先生、店やってよ。あげるから。医者も焼き鳥もおんなじでしょう?」と冗談が返ってくるほどでした。そうこうしているうちに膵臓がんは、どんどん縮小して本当にがんなのかと思えるほどになり、抗がん薬を中止したまま、今も元気(?)で通院しています。もちろん奥さんと一緒に。「症状があっても心筋梗塞ほどでない」と考えているようです。

 そんな「おやじ」の様子を見ると、店の経営同様、生きることにあくせくしていない、屈託がない、性格や世界観ががんと一緒に生きる、私の勝手な思い込みですがいわゆる「With cancer」を極めているような感じがします。

 「おやじ」は、きっとまだまだ長生きするでしょう。平均寿命は過ぎ、100歳までも生きるのではないかとさえ思います。

 何事も苦にしない人生は、がんを克服できるのかもしれません。


坂田 優(さかた ゆう)氏
三沢市立三沢病院事業管理者

1973年弘前大学医学部卒、1992年弘前大学医学部第一内科助教授、1999年三沢市立三沢病院院長、2013年より現職。
効果的だが専門的な知識や技能が必要とされるがんの薬剤が登場し始めた1980年代から、消化器がんを中心に種々の固形がんに対する化学療法の実践、新規抗がん薬の臨床試験を積極的に行い、日本のがん化学療法の進化を支えてきた。
第83回日本胃癌学会会長、日本癌治療学会理事、弘前大学医学部臨床教授なども歴任。
「坂田 優はがん化学療法がまだ一般的でない1970年代からoncologyを志し実践していました。悪魔の手先薬屋の手先と言われていました」

この記事を友達に伝える印刷用ページ

Back Number バックナンバー