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がん診療の現場から

2019/9/6

手術の後に投薬を受ける術後補助療法で大切なこと

 早期がんの場合、再発を減らすために、手術の後に一定の期間、抗がん薬などを投与することがあります。これは術後補助療法またはアジュバントと呼ばれます。全てのがん種でというわけではありませんが、多くのがん種で行われ、乳がんではホルモン療法を行うこともあります。

 目に見えるがんは手術で取っていますので、目に見えないほどの小さながんが残っている可能性がある場合に、術後補助療法でそのがんを叩いてしまおうというものです。がんの種類によっては、術後補助療法の効果が臨床試験できちんと証明されています。

 術後補助療法を医師から勧められた場合、受けるかどうかは患者さんの覚悟の問題になります。術後補助療法を受ければ100%再発しないというわけではないし、副作用が出る場合もあるからです。がんはその種類によって手術だけで治る割合が異なります。ですから、大雑把な言い方になりますが、例えば手術だけで6割の患者さんが治るところを、薬剤を加えて7割5分まで患者が治る割合を高めようというのが術後補助療法です。逆の言い方をすれば、6割の人は受けなくても治るということです。

 日本人はまじめなので、術後補助療法の投薬を一生懸命受けるケースが多いです。しかし投薬によって副作用が出る場合もあります。ですから医師は、患者さんの年齢や置かれている状況によって、術後補助療法を勧める強さを変えています。例えば、50代で家族を支えていかなければいけないような方には、「5%でも10%でも確率を上げ、悔いを残さないようにしないといけないよ」と話します。一方、75歳を超えている場合には、それほど強く勧めないこともあります。

 そして、術後補助療法を受けると患者さんが決めた場合には、医師は「頑張れ」というスタンスで投薬を行います。それでも、副作用でどうしても辛いという場合には、「途中でやめたとしてもここまで頑張ったから十分効果がある」「もともとやらなくても6割は治るのだからあまり無理しなくても良い」などとお話し、投薬の中止も含めて患者さんにとって一番適切な方法を見極めていきます。

 ですから、術後補助療法を受ける場合、最も大切なことは、辛かったらしっかりと医師に相談することです。患者さんが勝手にやめてしまうと、その患者さんにとって適切な方法が取れなくなることにつながりかねません。

 医療者と向き合うこと、よく相談することが大切ですが、医師に話すのは難しいと考える患者さんもいます。その場合は、医師以外の専門職に相談することをお勧めします。10年以上前とは異なり、今は点滴注射する場合は通院センターで投薬が行われます。通院センターには看護師や薬剤師がいますから、オープンな場で相談ができるのです。


佐藤 太郎(さとう たろう)氏
大阪大学先進癌薬物療法開発学教授

1993年弘前大学医学部卒。弘前大学第一内科で坂田優氏の薫陶を受ける。
Case Western Reserve Univ. School of Medicine、Univ. of Colorado Health science Ctr. School of Medicineを経て、2003年近畿大学腫瘍内科助手、2005年講師。2011年大阪大学先進癌薬物療法開発学准教授、2013年より現職。
「2000年から2010年ころまで、日本における新規抗がん剤の導入は、世界より数年遅れているのが一般的でした。そこには政治的な問題もありますが、新薬を適切に患者に使用し、評価する、薬物療法医が十分いない事も大きな要因となっていました。私たちは、2011年から大阪大学消化器外科教室と共同し、腫瘍内科として、新薬の導入に努めています」

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