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がん診療の現場から

2019/3/22

健康食品はがんの治療でお守りになる場合も

 ある大腸がんの患者さんがいました。その人は連れ合いをがんで亡くしているために健康志向が強く、盛んに宣伝されていた×××という健康食品を常日頃から食べていたそうです。薬や病院が嫌いで、その健康食品を食べることで、健康が維持されていると考えておられたようです。

 数年前、腹痛と下痢が起こるようになりました。しかし、苦しみながらも病院を訪れることはなく、全く食事がとれないほどの腹痛、腹満が生じてようやく受診されました。診断の結果は盲腸がんで、すぐに手術をお勧めしました。ところが、手術にも強い抵抗感を持たれており、すぐには手術の了解が得られず時を過ごしていました。ご子息の強い勧めで、しぶしぶ手術を受けられ、幸い術後の経過も良く、まもなく経口摂取ができるようになりました。

 手術の結果、がんはステージ IIIAと再発のリスクが高い状態まで進んでいましたので、再発予防のために術後補助療法として抗がん薬投与をお勧めしました。一応試されたのですが、2~3日で「あわない」と拒否されました。そして、健康食品である×××を入院中から再び食べ始めました。退院後も、抗がん薬の術後補助療法はあくまでも拒否し、×××を継続して食べていらしたその患者さんは、残念ながら2年で再発しました。その時は、抗がん薬の術後補助療法を行っていれば再発を防げたのではないかと、残念な気持ちになりました。

 再発後、著名な医師の勧めもあって、その患者さんはしぶしぶ来院されました。今度は高度の腹水があり、腹水濾過濃縮再静注法(CART)も繰り返し行いました。そして何とか同意を得て化学療法を行ったところ、幸い部分奏効(PR)と効果が認められ、食事を再開できるようになりました。しかし、抗がん薬の治療継続は拒否され、また×××を食べ始められました。そして緩和医療で専門医のケアを受けながらも、鎮痛剤もそこそこに経口摂取ができるうちは×××を食べ続けておられました。

 この患者さんのケースを通じて、「私はまだまだ×××以上には信じてもらえなかった」という歯がゆさを感じました。ただし、今になって考えてみると、抗がん薬を投与していればという考え方は、実は医師の身勝手な見方だったのかもしれません。患者さん本人にしてみれば、医師や現代医学よりも心底信じた×××が心の支えになっていたものと思われます。患者さんにとって×××は何よりも大切な神のような存在で、×××を続けたことで人生を全うされたと信じています。ご家族も「頑固な人だったが思い通りに生きた」と納得しておられたようでした。

 健康食品やサプリメントは役に立つか否かではなく、患者さん個人にとってお守りのような存在ではないかとつくづく思います。できれば抗がん薬もお守りの一つに加えていただけるようになっていただきたいものですが、そのためには、医師と患者双方の十分な意思の疎通が必要だということを痛感しています。そして、サプリメントや健康食品は、成分をよく調べて抗がん薬との相互作用がないことをしっかりと確認した上で、摂ることが大切ではないかと考えます。相互作用さえ問題がないのであれば、患者さんにとって抗がん薬に加えてサプリメントや健康食品を摂ることは、悪いことではないと感じています。


坂田 優(さかた ゆう)氏
三沢市立三沢病院事業管理者

1973年弘前大学医学部卒、1992年弘前大学医学部第一内科助教授、1999年三沢市立三沢病院院長、2013年より現職。
効果的だが専門的な知識や技能が必要とされるがんの薬剤が登場し始めた1980年代から、消化器がんを中心に種々の固形がんに対する化学療法の実践、新規抗がん剤の臨床試験を積極的に行い、日本のがん化学療法の進化を支えてきた。
第83回日本胃癌学会会長、日本癌治療学会理事、弘前大学医学部臨床教授なども歴任。
「坂田 優はがん化学療法がまだ一般的でない1970年代からoncologyを志し実践していました。悪魔の手先薬屋の手先と言われていました」

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