このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

新着一覧へ

がん診療の現場から

2019/1/7

T氏からくる定期便で尋ねられることは?

三沢市立三沢病院事業管理者 坂田 優

 T氏から定期便のメールが届きました。彼は約5年前に化学療法後に膵臓がんの手術をして、再燃した患者さんです。病理学者でもあります。再燃後にはPDになるたびにとっかえひっかえレジメンを変更して化学療法を続けてきました。予後が良くない膵臓がんでありながら、化学療法の一つひとつがそれなりに有効で、現在は、CT検査で転移がまだあるような無いような状態となっています。腫瘍マーカーも上がったり下がったりを繰り返してきました。臨床症状としては、膵臓がんによるひどいものはなく、化学療法によるしびれや脱毛があるのが悩みといった状況です。膵臓がんでありながら、化学療法でこれほど長期に生き延びておられる、サバイバーと言ってよいのではないかと思っています。

 さて、そのT氏のメールですが、細々と自分の症状について相談するようなものではありません。「仕事の依頼が多く来ているけど、受けても良いか」「来年の講演を頼まれたけど受けても良いか」といったことを尋ねるものです。T氏からくる定期的なメールは、自然を愛でる旅での感動を伝えつつ、いつも先の仕事についての相談です。彼としては、日々不安を抱えてじっとしているより、学会などに出て自らの意見を述べて、批判を受けるほうがワクワクする、自分を磨きたいと考えているようです。そして自然と向き合って生きている実感を味わい、そのことで病と折り合いをつけて、さらに自らを向上させたいと願う彼の心、情熱と向上心がひしひしと伝わってきます。私はもちろん「すべて引き受けてください」と返事をします。

 がんになると、不安にさいなまれ落ち込んで辛い気持ちになることは少なくありません。それでも、ふさぎ込むよりも少しでも前を向いて、自らが納得のいく人生を送ろうと考えることが大切ではないかと考えています。その気持ちの在り方が、もしかすると治癒力を支えより長く有意義に生きる力にもなるのかもしれません。


坂田 優(さかた ゆう)氏
三沢市立三沢病院事業管理者

1973年弘前大学医学部卒、1992年弘前大学医学部第一内科助教授、1999年三沢市立三沢病院院長、2013年より現職。
効果的だが専門的な知識や技能が必要とされるがんの薬剤が登場し始めた1980年代から、消化器がんを中心に種々の固形がんに対する化学療法の実践、新規抗がん剤の臨床試験を積極的に行い、日本のがん化学療法の進化を支えてきた。
第83回日本胃癌学会会長、日本癌治療学会理事、弘前大学医学部臨床教授なども歴任。
「坂田 優はがん化学療法がまだ一般的でない1970年代からoncologyを志し実践していました。悪魔の手先薬屋の手先と言われていました」

この記事を友達に伝える印刷用ページ