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がん診療の現場から

2018/7/31

イチイの気

三沢市立三沢病院事業管理者 坂田 優

 三沢市立三沢病院は2010年11月、旧三沢市立三沢病院敷地内の桜の木の安寧を確認確保して新築移転をした。
 新病院は外来・検査関係を一階に集中して4階建て220床で運営を始めた。外来はダビンチ効果と称して一目ですべての科が見渡せる遠近法を使用している(どうぞ一度見学にいらしてください)。


 2011年3月3〜5日、第83回日本胃癌学会総会を青森県三沢市で開催し、滞りなく成功裏に終了しました。休む間もなく通常の診療体制が始まるというところで、3月11日14時46分18秒に大きな揺れがきて、病院は停電。すぐに自家発電が通電して、これはと思いテレビを見ると緊急速報が流れ、マグニチュード9以上、所により震度6以上を伝えています。三沢も例外ではなく停電が始まり、水道は供給できず水は砂だらけとなり暗澹としました。

 太平洋岸の津波などは想像を絶するもので、いまだに復興が終わっていません。このすぐあと原発の事故が発生、この時の恐ろしさは例えようがなく、チェルノブイリを想起しました。

 当時三沢市で電気のついているところは三沢市立三沢病院だけで、信号もすべて消えた真っ暗な町で、不夜城のような姿を見せていました。その正面玄関前には、樹齢300年以上のイチイの樹が、この地震にも負けずに立っていました。

 病を克服するシンボルとして、病院を新築した際にイチイの木を植樹したのです。老木ですが、今も青々とした雄姿を見せています。この木を見るたびに、木の強さ、生命力を感じるのです。


 パクリタキセルやドセタキセルといったタキサン系の抗がん剤は、イチイの樹皮から見つかりました。がんと闘う患者さんを診察する際には「震災でも倒れなかった正面玄関前のイチイの木は、抗がん薬のもとにもなっている」と話して闘病の心構えを伝えてきました。それが患者さんにとってどれほどの力になるかはわかりませんが‥‥。今でも時間があるごとに木の下まで行って長寿を祝い、今後の幸をお願いする日が続いています。


坂田 優(さかた ゆう)氏
三沢市立三沢病院事業管理者

1973年弘前大学医学部卒、1992年弘前大学医学部第一内科助教授、1999年三沢市立三沢病院院長、2013年より現職。
効果的だが専門的な知識や技能が必要とされるがんの薬剤が登場し始めた1980年代から、消化器がんを中心に種々の固形がんに対する化学療法の実践、新規抗がん剤の臨床試験を積極的に行い、日本のがん化学療法の進化を支えてきた。
第83回日本胃癌学会会長、日本癌治療学会理事、弘前大学医学部臨床教授なども歴任。

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