乳がんの治療中には、抗がん剤などの副作用により頭髪や眉の脱毛、肌の変化など様々な外見の変化が起こる。美しさを損なうことで気持ちが落ち込み、外出もままならなくなってしまう場合も少なくない。
そこで注目されているのがウイッグやメークなどによる外見ケアの効果だ。ちょっとした工夫で見た目を美しく装うだけで、明るい自分を取り戻し、毎日を積極的に生き生きと過ごせるようになる。
第1回は、聖マリアンナ医大ブレスト&イメージングセンター院長の福田護氏に、乳がん化学療法による外見の変化について聞くとともに、患者が最も気にしている「顔の悩み」の解決法をまとめた。
聖マリアンナ医大ブレスト&イメージングセンター院長の福田護氏
乳がんの治療には局所の治療である手術と、抗がん剤などによる全身の治療とがある。多くの場合、乳がんの患者は手術をした後、通院しながら抗がん剤などの全身の治療を行うことになる。「患者さんは乳房を失うことだけでなく、全身治療の副作用で外見の変化が生じることにも精神的な苦痛を感じています」と聖マリアンナ医大ブレスト&イメージングセンター院長の福田護氏は話す。
福田氏が理事長を勤めるNPO法人キャンサーリボンズが中心となり行った乳がん患者を中心とした意識調査によると、外見のイメージが変わったと感じている人の割合は62%、他人の視線が気になるようになったと答えた人は47%に上った(回答者数62人)。
それでは、乳がんの全身治療ではどのような外見の変化が生じるのか。福田氏によると、抗がん剤による化学療法を始めると頭髪、眉、まつげの脱毛、皮膚の黒ずみや乾燥、爪の変形や変色などが起こるという。「抗がん剤は、細胞増殖が盛んな所に働きその作用を阻害する薬。がん細胞だけでなく、髪の毛を作る毛母細胞や皮膚の基底細胞などにもダメージを与えるため、このような変化が起きるのです」と説明する。
治療中でも積極的に美しく装って
こうした外見の変化は数カ月~2年と長期にわたるため、治療中だから仕方ないでは済まされない。女性にとって外見は重要で、特に仕事で人に接しなければならない場合はなおさらだ。外見の変化を気にするあまり人と会うことを避けるようになり、病院に通うことすら困難になってしまう場合も少なくない。外見ケアは治療を継続する上でもとても重要といえる。
「幸い、外見はいろいろな美容法でカバーし美しく装うことができます。そうすることで気分が明るくなり前向きに過ごせるのであればそれはとても重要で、治療にもよい影響を与えます。病気だからといって我慢せずに積極的にケアをし、どんどん美しくなってください」と福田氏は話す。