「緩和ケア=身体的な痛みに対する薬物治療 と考えている人もいるかもしれません。しかし、実際にはもっと広く、がんになったことによって生じたさまざまな痛みを軽減するために、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、リハビリ職種などがチームを組み、ケアを行っています。自分だけで抱え込まずに、担当医、看護師、薬剤師、がん診療連携拠点病院の相談支援センターのスタッフなどに、今どこが痛いのか、何がつらいのかを伝えるようにしてください」と的場氏は話す。
担当医になかなか痛みのことを伝えられないという人は、どこが痛むのか、どんな痛みなのかを具体的に紙に書いて持参すれば、短時間でも医師に伝えることができるはずだ。
医療機関でがん患者を対象に行われている緩和治療を以下に示した(表1)。
表1 がん患者を対象に行われる緩和治療法(国立がん研究センターがん対策情報センターホームページを参考に作成)
身体的な痛みに対する薬物治療とは
緩和治療で中心となるのは、痛み止めを使った薬物療法だ。がん患者の20~50%に患部の痛み、頭痛、吐き気、息苦しさ、だるさなどの身体的な痛みがあるという。進行がんの患者では70~80%が痛みを経験し、約80%が2カ所以上の痛みを抱えている。がん自体による痛みだけではなく、手術後の痛みや放射線治療や化学療法に伴う痛みと格闘する人もいる。
こうした身体的痛みを軽減するための薬物治療は、WHO(国際保健連盟)疼痛治療法に従って行われている。この疼痛治療法が発表されたのは1986年だが、四半世紀たって新たな薬が出ている現在でも、(1)可能な限り最も簡単な投与経路で、(2)定期的に鎮痛薬を投与、(3)段階的に鎮痛薬を選択、(4)患者ごとに投与量を決定、(5)細部にわたって配慮を――といった基本5原則は変わらないという。