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がん患者のための臨床試験の話

2017/4/14

がん患者のための臨床試験の話 Vol.2

実際に、臨床試験はどう進む?

福島安紀=医療ライター

臨床試験のスケジュールは?
 臨床試験の参加に同意した場合には、まずはスクリーニング検査と診察を受けて、その試験の参加条件(適格基準)に合うかどうか、再度チェックを受ける。臨床試験には、年齢、全身状態、治療歴など、試験ごとに適格基準が決められている。この時点で基準に合わなければ、臨床試験への参加はできない。試験の参加条件を満たすと分かり参加が決まったら、その後は臨床試験実施計画書(プロトコル)に沿って診察、検査、治療を受ける。

 臨床試験実施計画やスケジュールは試験によって異なるが、例えば、3週間に1回注射で投与するタイプのがん治験薬Aの開発を目的とした治験の場合、最初にA薬を投与する当日や研究で決められた日に、血液検査、尿検査、CT(またはMRI)などの画像検査、心電図検査といった検査を受ける。診察の前には、臨床研究コーディネーターや看護師が健康状態、体調の変化(有害事象)や他の薬の使用状況などをチェックしてから、医師が診察する。検査や診察の結果、問題がなければ初めてA薬を投与することになる。その後は定期的に、検査や診察、治療薬Aの投与を受ける。

 主に第3相試験では、被験者を無作為に複数のグループに分け、新規の薬や治療法の候補と既存の薬や治療法を比較する「無作為化比較試験」を実施する。例えば、手術後の再発予防治療としてがん治験薬Bの投与が有効かどうかをみるために、被験者を治験薬Bを投与する群とプラセボなどを投与する群で比較するわけだ。

 プラセボとは、乳糖やデンプンなどを使って、治験の対象となる薬と外見(色・形・大きさ・肌合い)、重さ、味覚を含め、そっくりに製剤化されている偽薬のこと。医師もCRCも、外見だけで偽薬か治験薬かを識別することはできない。「がんの治験で行われる無作為化比較試験の場合、(1)治験薬と標準治療薬との比較、(2)治験薬+標準治療とプラセボ(偽薬)+標準治療との比較、(3)治験薬とプラセボ(偽薬)あるいは何もしない経過観察との比較、の主に3つのパターンがあります。治験薬の安全性や有効性を正しく評価するために、割り付けられた薬がプラセボ(偽薬)か治験薬かどちらなのか、患者さんにも医療関係者にも分からないようにする二重盲検法という方法が取られることが多いです」と中濱氏は説明する。二重盲検法を取るのは、作為や先入観が働くことによるデータの偏りを防ぐためだ。ちなみに、医師や試験関係者は割り付けの内容を知っているが患者には知らされない方法は「単盲検法」という。

 患者が新薬あるいは新治療の候補か、標準治療やプラセボのどちらのグループに入るかは、製薬企業や医療機関とはまったく関係ない登録センターが、無作為に割り振っている。

 治験の実施中、来院時にCRCと担当医は、体調の変化と有害事象、他の薬の服用状況の確認を行う。研究で必要な場合は、電話で確認することもある。また定期的に受診して検査や医師の診察を受け、治験薬の効果と安全性を評価する。患者日誌やQOL調査など、自分の心身の状態を記入する必要もある。検査や薬の投与、患者日誌などの記入のスケジュールを守らなければならないのは、被験者の安全性を守ると共に正確なデータを得るためだ。特に自宅で服用する内服薬の治験に参加している場合には、飲み忘れは禁物だ。

 「検査や診察がないときでも、胸痛、腹痛、発熱、いつもよりだるい、湿疹など、いつもと違う体調の変化が出た場合など、その治験薬の副作用かどうかに関係なく、すべての体調の変化を担当医やCRCに報告してください。来院予定日でない日に、あらかじめ連絡をするよう説明されていた症状が出た場合や症状が強い場合は、電話でお知らせください。症状によっては、すぐに来院いただくこともあります。また、風邪やけがなど他の病気も含めて別の医療機関にかかるとき、新たな医薬品、サプリメントを使うときには、事前に臨床試験の担当医や臨床研究コーディネーターに相談し、かかった医療機関にも臨床試験に参加していることを必ず伝えましょう」(中濱氏)。

 臨床試験に参加する際には、緊急時や夜間の連絡先を確認しておくことも大切だ。臨床試験に参加している患者に対しては、試験の実施医療機関が24時間対応することになっている。

 臨床試験に参加すると、どこかに隔離されるのではないかと思っている人もいるようだが、多くの病院では通常の治療や検査と同じ部屋で臨床試験が進む。最近では、多くの臨床試験が外来で行われている。入院の有無やその期間は、それぞれの研究で定められている。例えば、入院が必要になるのは、(1)臨床試験中に手術が実施される場合や治験薬の投与後24時間体制で体に起こる影響を観察する場合、(2)入院が必要になるような命にかかわる重大な有害事象が想定されるときだ。それ以外でも、薬物の吸収、代謝、排せつ状況、有害事象の出現の有無を確認するために、頻繁に採血や尿検査などを行わなければならないときに入院する場合がある。

治験参加中に飲んではいけない薬とは
 治験では、治験薬と併用できない「併用禁止薬」がある場合が多い。併用してはいけないのは、(1)相互作用で治験薬の効果が増強・減弱されたり、副作用が強く出てしまったりするような医薬品、(2)治験薬と同様の効果を持つ医薬品である。同様の効果を持つ医薬品を併用できないのは、治験薬とその医薬品のどちらが効いたのか評価ができなくなるからだ。「ただ、併用禁止薬でも、それを使わなければ症状が悪化するなど患者の不利益につながる場合には、併用禁止薬を使う場合もあります。異変を感じたり、今までと違う症状がみられたりしたとき、市販薬を含めて薬を飲むときなどは、担当の医師やCRCに必ず相談しましょう」と中濱氏は話す。

 参加している患者に、研究を止めたほうがよいとあらかじめ定められていた有害事象が出たり、診察の結果、医師がこれ以上臨床試験に参加し続けないほうがよいと判断したりしたとき、被験者が検査や診察に通えなくなったときにも臨床試験への参加は取りやめになる。また、重大な有害事象が出た、あるいは予想以上に早く新しい薬の候補とプラセボとの有効性に歴然とした差が出たときには、試験そのものが途中で中止になる場合もある。

 がんの臨床試験の場合、長期間に渡って健康状態や生存しているかどうかを追跡調査する場合も多い。定期的にその病院を受診しているのであれば来院時に、既にその病院とは関わりがなくなっている場合には、追跡期間中は担当医やCRCから電話で健康状態の確認を受けることになる。最終的な結果が出た際には、臨床試験の参加者本人に、その結果が伝えられる。

 臨床試験に参加した人の中には、「普通の診療とあまり変わらずほっとした」「CRCが相談に乗ってくれて心強かった」といった声もある。その一方で、「新しい治療だからいいと思ったら強い副作用が出てつらかった」という人がいるのも事実だ。不安や疑問はその都度、担当医やCRC、周囲の医療スタッフに伝え、納得して臨床試験に参加するようにしたい。

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