《相談者への返信》
お母さんの揺れ動いている気持ちが痛いほど伝わってきました。娘さんは一時的にであっても家へ帰れたので、自信を持たれたことでしょう。咳も息苦しさも乗り越えてしまったのですよね。家へ帰れて良かったと喜んでいる娘さんの姿が目に浮かびます。お母さんも不安だったけれど、家に連れて帰ってみて、やっぱり良かったと思われたのですよね。
でも温泉へ行くことについては難しいとお考えです。「心配で、心配で」と繰り返されるお母さんの不安は手に取るように分かります。咳も出ている、息苦しさもある。そんな状況でも、娘さんはどうしても温泉へ行きたいというのです。そこには、何か理由があるのではないでしょうか。思い出の温泉なのかもしれません。それとも、思い入れの強い何かが、旅先にあるのでしょうか。連れて行って差し上げたいですね。お母さんがおっしゃるように、絶対無理なのかどうかを確認する方法があります。娘さんの希望をかなえる良い方法が見つかるかもしれません。
まずは、「今だったら大丈夫」と言っている医師と「行った方がいい」と言う看護師さんに、もっと詳しく尋ねてみることです。母親であるあなたが1人で面談するというより、どなたかご家族の方と一緒が良いと思います。もしよろしければ、私たちメッセンジャーナースが医師や看護師と連携を図った上で、面談の時間を設けていただくという方法もあります。看護師さんは、看護師に付き添ってもらう方法もあると言ってくれています。もっと詳しく教えていただいて検討してみるのもいいのではないでしょうか。面談することで、先が開けるかもしれません。
《読者の方へ》
今回の事例では、「心配で、心配で」と訴えるお母さんの気持ちを、まず受け止めることが何より大事です。本当は娘さんの希望をかなえてあげたい、一方で、何かあったら大変。だって生きていてほしいから・・・。だから、お母さんは心配で心配でたまらないのです。自宅に帰ったときの娘さんの様子から、娘さんの希望に沿うことの大切さも十分感じているお母さんです。でも、旅となると、自宅への外泊とは事情が全く異なります。付き添うことになるお母さんの心配事は、数え切れないほどたくさんあるでしょう。主治医も看護師も「行った方が良い」と言っているのです。お母さんが抱えている心配事について、一つひとつ丁寧に答えてもらえれば、お母さんも気持ちが楽になり、対応策も見つかるかもしれません。この方は後日、看護師さんの付き添いを得て、娘さんが願った楽しい旅行を実現されたそうです。
メッセンジャーナースとは、「医療の受け手が自分らしい生を全うする治療・生き方の選択を迫られる時に、医療の受け手に生じる心理的内面の葛藤をそのまま認め、医療の担い手との認識のズレを正す対話を重視し、医療の受け手自ら選択・納得に至るまでの懸け橋になる看護師」をいいます。開業ナースの草分けである村松静子氏(在宅看護研究センターLLP代表)らがメッセンジャーナース認定協会 (吉田和子会長)を立ち上げて、新たな担い手の養成に取り組んでいます。 |
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