今回は、「抗がん剤はもうやめたい。でも命綱を自ら断ち切るわけにはいかない」などと心の葛藤を吐露するようになった叔父さんについて相談したいという方の事例です。患者さんご本人をはじめ、その身近な方々あるいは医療従事者にとって、どのような対応が求められるのか、皆さんも一緒に考えてみていただけないでしょうか。
(村松さんのホームページの「父ちゃんの心の花束」より)
《相談者からの手紙》
叔父のことで相談します。叔父は3年前にがんの告知を受けました。当初からできる限りの治療を受けたいと希望し、幸いにも日本でも有数のがん治療を行っている病院を紹介してもらい、現在に至るまで化学療法を受けています。最初にがんの告知を受けた病院では余命3カ月と言われた叔父ですが、大きな病院で診てもらうまでの数カ月を無駄に過ごすわけにはいかないと、民間療法や自由診療も含めてありとあらゆることに全力で取り組み、今に至ります。
叔父は現在、外来で化学療法を受けているのですが、今までは何も問題なく通えていました。しかし、最近になり体力が落ちてきたのか、不安を口にするようになりました。「歩けるうちは通えると思うが、俺はどのくらい自分の足で病院に通えるのかな」「病院に通えなくなったら、どうしたら良いのだろう」「医師からは、がんというのは生活習慣病みたいなものだから上手く付き合っていきましょうと言われたけど、実際はしんどいね」などと弱音も吐くようになりました。
ここ最近は副作用が強く出るようになり、容貌もまるっきり変わってきてしまいました。叔父自身、血液データの結果に一喜一憂することにも精神的に疲れてきてしまった様子です。先日電話口で「抗がん剤はもうやめたい。でも、命綱を自ら断ち切るわけにはいかないし」と心の葛藤を話してくれました。
化学療法をやめたい気持ちもあるけれど、命を諦めてしまうことになる話だから家族にはまだ言えないと、叔母を気遣っている様子が伝わってきました。告知を受けた当初は相当ショックを受けながらも、「死ぬわけにはいかないんだ。気持ちを強く持って生活改善する」と意気込んでいました。が、最近では、抗がん剤治療の副作用に体がついていかない様子で、このまま抗がん剤治療を続けるべきなのか、続ける意味があるのかどうなのか、叔母にも話せず葛藤しているようなのです。
私は、親族で唯一医療のことが分かる人間なので、心臓の悪い叔母には話せない相談を叔父から受けることがあります。それでも今回は、私としてもどのように叔父に返答したら良いのか、簡単に答えられる内容ではないので、ご相談申し上げます。