中央検査室マネージメントサポートスタッフ:井上淳氏
1963年生まれ。1985年専門学校卒。東海大学医学部付属病院、保健科学研究所を経て
1986年から現職。85年臨床検査技師(国家資格)取得。94年臨床工学技士の国家資格取得。
病態の絞り込みは推理小説を読むようなもの
次に「臨床検査技師」の仕事を紹介する。
私たちは、健康診断・がん検診・精密検査・術前検査・退院後の定期検診などの検査を受けたとき、検査結果をもらうが、その数字の意味を考えたことはあるだろうか。同病院の中央検査室マネージメントサポートスタッフで臨床検査技師の井上淳氏は「検査の結果からは、身体の異常がわかります。検査結果は数字の羅列ですが、そこからは、検査を受けた方の身体の病態が浮かび上がってきます」と言う。
井上氏は、イメージとして、こんな例を説明する。
数週間、咳が続いている。そんな時は、まず肺炎を疑い、レントゲン検査をする。さらに、血液検査の結果で白血球数やCRP(C反応性蛋白)が増えていれば、身体の中で炎症などが起こっているという可能性を考える。
次に、炎症の原因はウイルスか細菌かを調べる。細菌を疑う場合は、痰から細菌を分離したり、遺伝子検査によって結核菌などの細菌があるかどうか、調べたりする。がんも疑い、腫瘍マーカー(CYFRA、SCC)を測る。
いろいろな病気の可能性を考えながら検査をしていくことで、いま身体でどんなことが起こっているか、絞りこんでいく。実際の臨床現場では、臨床検査技師が項目を選ぶのではなく、医師が診断項目を決め、その依頼によって臨床検査技師が検査を実施する。
検査結果の数字からはどんなことが読み取れるか、井上氏に2枚の一覧表を作成してもらった。
1枚は「がん患者が受ける検査」、2枚目は「腫瘍マーカーについて」で、それぞれ検査の目的、わかること、注意点やあらかじめ知っておきたいことを示している。「臨床検査技師の仕事のおもしろさは、検査結果から身体にどんな病気が潜んでいるか、推測できることです。まるで、推理小説を読んでいる気分になることもあります」と井上氏は言う。