貯金と命を天びんにかけ、どちらが先に尽きるかなどと切ない時を過ごしている患者に目を向けて欲しい――。2010年1月に実施したがんナビ読者アンケート(回答137人)には、こういった切実な声が寄せられた。「長生きすることにかえって不安すら覚える」「毎月の治療費が高く大変困っています」など医療費にまつわるコメントも少なくなく、「不安を話しやすい雰囲気を作るよう心がけて」「経過観察中の不安や恐怖の解決方法が見つからない」などの訴えも多かった。以下、主な患者の声をお届けする。
◆ 「長期にわたる治療は経済的負担が大きい」
がん治療は、やはり医療費が高いのが悩ましい。抗がん剤の開発費などには莫大な費用がかかっているのは承知しているが、長期にわたる治療は経済的負担が大きすぎる。私は慢性骨髄性白血病で、抗がん剤をすでに8年服用しているが、現在のところではこの薬をやめることができない。この薬のおかげでQOLは高いのだが、あまりに高額なので長生きすることにかえって不安すら覚える。(患者、40代の女性)
◆ 「毎月の治療費が高くて困っています」
慢性骨髄性白血病の患者ですが、毎月の治療費が高く大変困っています。恐らく他の患者様も同様の意見を持っていると思います。こういった現状をもっと取り上げていただき、改善するような働きかけをお願いします。(患者、30代の男性)
◆ 「切ない時を過ごしている患者に目を向けて」
1992年にがんの治療を受け、転移をくりかえしています。現在8回目の転移となりました。それでも治療してくださる医師がいて、私は恵まれていると感謝の日々です。
いろいろな方の闘病生活をうかがうと、治療面の格差の問題などが見えてきますが、なんとかならないものでしょうか。それと、 抗がん剤治療は危険を伴い肉体的・精神的・経済的にも辛いことが多いです。穏やかに専門家の目の届く所で治療をしていただきたいです。薬も新しく認可され行政の負担も多く大変でしょうが、患者個人の負担も多くなり、「貯金と命の天びん」でどちらが先に尽きるかなどと切ない時を過ごしている患者に目を向けて欲しいです。(患者、60代の女性)
◆ 「がん患者は精神的に不安定」
がん治療を行っている病院には、がん患者の精神的な面を専門的にケアできる腫瘍精神科医を配置して欲しい。がん患者は精神的に不安定です。がんを背負っているので、ほかとは本質的に違うと思います。がんの告知の時、再発の時など精神的に厳しくなる状況の時には、「もし、不安になったらここに相談して」などというように相談先のリストをもらえればいいと思います。事実、私は、がんの疑いがあると言われた時(結局はがんだったが)、突然のことで、落ち込んでどこに相談したらよいのか分からなかった。相談先が分かっていれば、すぐにでも相談に行ったと思います。(患者、40代の女性)
◆ 「不安を話しやすい雰囲気を作るよう心がけて」
医師がもっと患者の精神面の不安を話しやすい雰囲気を作るよう心がけてくれたらいいと思います。ご多忙でしょうから、患者一人ひとりにゆっくりと話すのはなかなか困難だと思いますが・・・。(患者、40代の女性)
◆ 「経過観察中の不安や恐怖の解決方法が見つかりません」
がんと診断されてから治療が一区切りつき、経過観察に入って再発転移がないかどうかを検査で定期的に調べている。その期間の、不安や恐怖の解決方法が、なかなか見つかりません。病気治療の最中の時は、医師も看護師も近くにいるので質問もできるのですが、それが終わると、なかなかそうも行きません。
がんの治療を行ってくれる大きな病院は、気軽に行けるようなところでもありません。 私の場合は、地元の病院が対処できないということで、東京で治療しました。定期的に上京します。がんと最初に診断したのは、地元の病院ですが、「治療ができないから、治療ができる病院を自分で探しなさい。紹介状は書きますから」と言われ、東京で治療することになりました。東京の先生は、「あとは地元で」なんて言ったこともあります。地元の先生は、もう自分の手を離れた患者という扱いをしてきます。宙ぶらりんです。こういう状況の、地方在住のがん患者は多いのではないでしょうか? (患者、40代の女性)(まとめ:三和 護)
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