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レポート

2022/08/02

日本IVR学会総会・市民公開講座より(1)

肺がん、腎がん、骨転移などに対するラジオ波焼灼療法が保険適用に

福島安紀=医療ライター

 日本IVR学会は第51回総会のプログラムの一環として、6月4~5日に市民公開講座「がん診療IVRをご存知ですか?」を開催した。IVR(Interventional Radiology)は、X線透視やCTの画像を見ながら行う画像下治療のこと。その一つである経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA:Radiofrequency ablation)が、肺がん、小径腎がん、悪性骨腫瘍、骨盤内悪性腫瘍などに対して、今年9月から新たに保険適用になることで注目されている。市民公開講座1回目の「がん診療とIVR:RFAの適応拡大を含めて」では、まず兵庫医科大学病院放射線科准教授の高木治行氏が「肺がん」をテーマに講演。続いて、三重大学医学部附属病院放射線科・病棟医長の山中隆嗣氏が「腎がん」、埼玉医科大学総合医療センター画像診断科・核医学科教授の宮崎将也氏が「その他のがん」について、具体的な事例を含めて解説した。


体への負担が少なく臓器を温存できるのがRFAのメリット

 経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)は、CTなどの画像を見ながら病変へ電極針を刺し、高周波の電磁波を流して腫瘍を焼き切る治療法だ。ラジオと似た周波数の電磁波で焼き切るので、ラジオ波焼灼療法と呼ばれる。これまで日本では、肝がんに対するRFAのみ保険診療で行われていたが、このほど、さまざまながんに保険適用が拡大されることになった。

高木治行 氏

 「RFAは局所麻酔で施行可能であり、体への負担が少なく、病変部をピンポイントで治療できるので、臓器機能を温存できるのもラジオ波の利点です。また体の負担が少ないため繰り返し治療が可能です。今回の市民公開講座でぜひ、皆さまにお知らせしたいことがあります。それは、RFAが、肝がん以外のさまざまな疾患にも保険診療で使えることが決まったことです」と兵庫医科大学病院放射線科准教授の高木治行氏は強調した。

 2022年9月からは、肺がん、小径腎がん、悪性骨腫瘍、骨盤内悪性腫瘍、四肢・胸腔内及び腹腔内に生じた軟部腫瘍、類骨骨腫(良性腫瘍)に対するRFAが、保険診療で受けられる。

 「肺がんでRFAの対象となるのは、原発性肺がん、または転移性肺腫瘍で、外科的切除を含む標準治療が困難、あるいは不適とされた場合です。対象の腫瘍は一般に標的病変と胸膜の間に1㎝以上の間隔があるのが望ましいとされます。RFAは腫瘍に直接針を刺す治療なので、心肺機能や止血凝固機能が保たれており、安全に穿刺経路が確保できることが治療の条件で、対象となる腫瘍は一般的に1~2.5cm以下です」と高木氏。

 なお、肺RFAを行わないほうが良いとされるのは、腫瘍が縦隔や胸膜に浸潤している、あるいは高度の肺気腫や間質性肺炎を合併しているような場合だ。また、在宅酸素療法中や高度の呼吸障害がある、過去にすでに肺に放射線治療が行われているケースは、重い合併症を起こすリスクが高いので、肺RFAの対象にはならない。肺RFAを実施するかどうかは、呼吸器内科、呼吸器外科など関連する複数の科との協議を経て決めるという。

事前に治療計画を立て、CT画像を見ながら病変部を焼灼

 高木氏は、実際の症例を基に、治療の流れを説明した。下図のように、患者は前日までに医師からの説明・同意、血液検査、呼吸機能検査、造影CT検査などを受け、医師は、治療前のCTを参考にして計画を立てる。

(高木氏講演資料より)

 当日は、治療直前のCTを撮影し、治療計画を最終決定する。治療計画の最終確認後は、消毒をして局所麻酔を行い、CT画像で位置を確認しながら病変部に電極を差し入れ、ラジオ波を発生させる。1つの腫瘍の焼灼にかかる時間は5~10分程度で、腫瘍が複数ある、あるいはやや大きい場合には、電極を刺してラジオ波を流すという一連の処置を数回繰り返す。

右肺の転移巣をRFAで治療した症例。血管を避けるためにうつ伏せの体位で、背中から電極針を刺すことになった。(高木氏講演資料より)

 RFAが終わったら胸部CTを撮影し、気胸や出血といった合併症がないかを確認し、必要に応じて処置をする。気胸は、肺の電極針を刺した所から空気がもれることで、肺RFA後に最も多い合併症だ。この治療は、一般的に1時間程度で終了する。

 翌日は、血液検査、胸部X線、造影CT検査などを行い、出血、気胸などの異常がないかを確認する。事例に挙げられた患者の場合、2日後のCT検査で治療効果良好と判断され、その翌日に退院した。

重度の合併症のリスクもあるため担当医の説明を良く聞き治療選択を

 三重大学放射線科のグループが、2011年に米国放射線学雑誌(AJR)に、420人の患者に1000回の肺RFAを施行した結果を報告した論文によると、肺RFA後の軽度・中等度の合併症は気胸44.5%(ドレナージが必要だったのは22.1%)、皮膚に空気が滞る皮下気腫9.3%、喀血が5.0%だった。

 「頻度は低いですが、死亡を含む重篤な合併症の報告もあります。肺RFA治療を受けられる際には、合併症のリスクについて十分な説明を聞いて理解した上で、治療を受けるかどうかを判断していただくことになります」と高木氏は話した。

 米国のデータベースを基にした後ろ向き調査では、原発性肺がんで手術または肺RFAを受けた患者の生存率に有意差がなかったことが報告されている。「別の施設からは、手術と比べると、肺RFAの方の成績が悪かったという報告もあります。そのため、原発性肺がん患者さんでは手術が第一選択で、高齢あるいは、他にも病気があって手術ができない場合に、肺RFAを治療選択肢として考慮します」と高木氏。

 全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)のガイドラインでは、「手術困難なステージ1の原発性肺がん、多発肺がん、術後再発肺がんの場合、肺RFAを考慮して良い」と記載されている。欧州IVR学会のガイドラインでは、「手術困難な原発性肺がんや数個の転移性肺がん」、米国IVR学会のガイドラインでは「手術困難なステージ1の原発性肺がん、術後再発肺がん、転移性肺がんの場合、肺RFAの対象になる」と記載されているという。肺RFAが保険適用になれば、日本でも手術が難しい原発性肺がん、転移性肺がんの患者の選択肢が広がる可能性が高い。

RFAは手術が困難なステージⅠの腎細胞がん治療の新たな選択肢に

 次に、三重大学医学部附属病院放射線科・病棟医長の山中隆嗣氏が、小径腎がんに対するRFAについて講演した。小径腎がんとは最大腫瘍径が4cm以下の小さい腎がんのことで、その多くは腎細胞がんと呼ばれるタイプの腫瘍だ。近年、画像診断の発達によって偶然見つかる頻度が増えている。2015年のデータでは、腎細胞がん全体の43.6%が小径腎がんだ。

山中隆嗣 氏

 「小径腎がんの中でも1~3cm以下で、転移や脈管侵襲のない腎細胞がんがRFAの良い適応とされます。腎RFAは手術の一種であり、心肺機能や止血凝固機能が保たれていることも必要です。また、針を刺す際に安全な穿刺経路が確保できる場合に限ります。関連する診療科、特に腎がんでは泌尿器科との協議の上、治療適応を決定します。『腎癌診療ガイドライン』(日本泌尿器科学会編)では、RFAを含む穿刺焼灼療法を予定している場合には、針を刺して、腫瘍細胞を採取する針生検による診断が推奨されています」と山中氏は解説した。

 腎RFAの対象となるのは、ステージⅠ期の腎細胞がんだ。ステージⅠ期の腎細胞がんでは手術が第一選択だが、高齢者、あるいは、重篤な合併症を有するか、患者が手術を希望しない場合には、穿刺焼灼療法が選択される。穿刺焼灼療法には、腎凍結療法(2011年から保険適用)とRFA(今年9月から保険適用になる予定)の2つの治療法があり、その他、慎重に経過観察を行う「監視療法」も選択肢だ。凍結療法もIVR治療の一種で、CT画像などを見ながら病変部に針を刺し、圧縮したアルゴンガスを針内の先端で急速に膨張させることで腫瘍を凍結させがん細胞を破壊する治療法だ。

 腎RFAの治療の流れは、肺RFAとほぼ同じで、治療前にCTまたはMRIの画像を基に、穿刺経路に大腸や血管がないか、焼灼部位の周囲に腸管や膵臓など重要な臓器が近接していないか確認し、治療の際の体位や穿刺経路の計画を立てる。

 治療当日は、RFA開始前に尿量や血尿の状態を確認するための尿道カテーテル(管)を留置し、CT画像を確認して穿刺経路を最終決定する。消毒が済んだら局所麻酔を行い、腫瘍に腸管などの臓器が近接している場合には、造影剤入りの水を注入して臓器との間を離す「液性隔離」を行う。腫瘍と腸管などの間が少なくとも1cm以上離れたところで、病変に電極針を穿刺し、1カ所当たり10分程度ラジオ波を通電する。ラジオ波焼灼が終わったら、腹部CT画像を撮影し、合併症がないかを確認する。腎RFAの合併症には、臓器に傷が付くことによる血腫、血尿、消化管損傷、感染/膿瘍、気胸/胸水貯留などがある(下表)。

(山中氏講演資料より)

腎機能への影響が少なく、単腎症例、多発性腎がん、高齢者でも治療可能

 ところで、RFAには手術と同程度の治療成績が期待できるのだろうか。山中氏は、日本放射線学会誌に2010年に掲載されたデータを紹介し、「4cm以下の小径腎がんに対するRFAと根治的腎摘除術と腎部分切除術を比較した研究で、全生存率ではRFAは手術と比較して悪くなっていますが、どの治療でも腎がんに関連する死亡はありません。腎がんの再発の有無をみた無病生存率では、根治的腎摘除術や腎部分切除と有意差がないという結果でした」と話した。腎機能への影響は腎部分切除とほぼ同等で、根治的腎摘除術よりは少ないという結果が報告されている。

(山中氏講演資料より)

 「腎RFAは腎機能への影響が少なく、外科的切除術と同等の効果が期待できます。特に、全身麻酔を必要とせず、体への負担が少ない点が利点です。片方の腎臓を失った方、複数の腎がんを有する方、高齢者、他に重篤な合併疾患を有する方にはRFAが勧められます」(山中氏)。

 同じ穿刺焼灼療法であるRFAと凍結療法との比較では、RFAのほうが鎮痛薬の使用量が多いが、出血性の合併症が少ないとされ、同等の治療成績が期待される。「これまでは、凍結療法には保険適用があることが最も大きな違いでしたが、RFAに保険が使えるようになれば、大きな差はなくなります。凍結療法が実施できる病院は全国に約30施設くらいしかありませんが、肝がんのラジオ波焼灼療法を行っている施設はかなり多いので、RFAの方がアクセスしやすい治療法になる可能性があります」と山中氏は指摘した。

(山中氏講演資料より)

骨転移や悪性骨腫瘍の痛みを軽減する効果も

 最後に、埼玉医科大学総合医療センター画像診断科・核医学科教授の宮崎将也氏が、悪性骨腫瘍、骨盤内のがん、類骨骨種(良性腫瘍)に対するRFAについて講演した。悪性骨腫瘍は、原発性悪性骨腫瘍と転移性骨腫瘍に分けられる。原発性悪性骨腫瘍は、骨肉腫など骨に由来するがんで、子どもや若者に発生しやすい。転移性骨腫瘍とは、肺がん、乳がんなどの骨以外の部位のがんから転移してきた骨腫瘍のことだ。骨肉腫など原発性悪性骨腫瘍に対するPFAは今のところ国内ではほとんど行われていないが、将来的には実施される可能性がある。

 「この悪性骨腫瘍に新たにRFAが保険適用となりますが、その対象となるのは、主に転移性骨腫瘍で、手術、放射線治療などの他の治療をすることが困難、あるいは適していないと判断された患者さんです。また、主な症状が悪性骨腫瘍による痛みであり、鎮痛剤を増量することでしか痛みをコントロールすることができない、もしくは鎮痛剤の効果のない患者さんもRFAの対象となります」と宮崎氏。一方、悪性骨腫瘍の近くに神経、腸、関節などの重要な臓器や構造がある、治療の対象となる腫瘍がたくさんある場合には、RFAでは治療できない可能性が高い。

 治療の流れは肺RFAや腎RFAとほとんど同じだが、骨腫瘍は痛みを伴う病変なので、RFAの前後には疼痛の程度の評価を行う。

 例えば、ある50代の男性は、甲状腺がんの治療後に左大腿部に痛みを感じ、CT検査で左骨盤の骨を溶かすような転移性骨腫瘍が見つかった。放射線治療をする予定だったが、痛みが強過ぎて安静の体位が取れないため、まずはRFAを行うことになった。左鼠径部の皮膚に局所麻酔をして、CT画像を見ながら、RFA治療針を左骨盤の病変へ刺してラジオ波を流し、焼灼した。RFA治療から数日後には痛みが軽減し、放射線治療を行えるようになって骨転移による痛みは半分以下に軽減し、これまでよりも楽に日常生活を送れるようになったという。

 さらに、骨盤内悪性腫瘍とは、骨盤の中の空間の中に発生したがんのことで、結腸がんや直腸がんの手術後に再発した病変やさまざまながんから骨盤内のリンパ節へ転移した病変が含まれる。骨盤内悪性腫瘍でRFAの対象となるのは、放射線治療など他の局所治療を行うことが適していない、もしくは他の治療の効果がないと判断された場合、主な痛みが骨盤内悪性腫瘍によるもので鎮痛薬を増やすことでしかコントロールができない場合だ。一方、病変が腸、神経などの重要な臓器、構造と強く癒着している場合や治療対象となる病変に対して放射線治療を行ったことがある、あるいは、治療対象となる病変に膿などの感染を生じたことがある場合には、重篤な合併症が起こるリスクがあるためRFAは施行できない。

 例えば、60代の男性は、直腸がん手術後の抗がん剤治療中に腹痛が生じて、PET-CT検査をしたところ骨盤内の右側にリンパ節転移が発見された。手術や放射線治療が困難な部位だったため、RFAで治療することになった。うつぶせの姿勢でCT画像を見ながら、リンパ節転移病変へ治療針を刺して焼灼を行ったところ、RFA治療後のPET-CTでは転移巣が完全に消失し痛みも改善したという。

(宮崎氏講演資料より)

RFA実施施設は日本IVR学会のホームページで閲覧可能

 「悪性骨腫瘍、骨盤内悪性腫瘍、類骨骨種に対するRFAでは、治療中や治療直後に、痛み、発熱、倦怠感はほとんどの方に生じますが、通常は1週間程度で改善します。中等度から重度の副作用、合併症には、RFAの熱が皮膚に加わることによるやけど、膀胱や直腸に孔があいたり皮膚とつながってしまったりするような治療部周囲の臓器損傷、細菌感染や膿の形成、RFAの熱が神経に加わることによって生じる神経損傷や障害、血管損傷による出血や血腫形成、RFAにより骨が弱くなることによって生じる骨折などが挙げられます。これらの副作用や合併症の頻度は0.5~8%程度と報告された文献により様々ですが、ほとんどの場合、副作用や合併症に対する治療で改善しますので、RFA治療によるメリットの方が大きいと考えられています」と宮崎氏。頻度は低いが死亡を含む重篤な合併症が起こるリスクもあるため、PFAを受けるかどうかは、患者本人と家族が担当医の説明をよく聞き、納得して決めることが大切になる。

(宮崎氏講演資料より)

 宮崎氏は、「悪性骨腫瘍、骨盤内悪性腫瘍などに対するRFAは痛みの軽減効果が確認されており、体への負担が少なく治療効果が高い治療です。日本IVR学会の専門医はこれらの治療を安全に行うことができます」と強調した。

 肺がん、小径腎がん、悪性骨腫瘍などに対するRFAを受けられる医療機関を探すには、日本IVR学会のホームページ内の「IVRの手技別病院一覧」が参考になる。住んでいる地域を選び、例えば、肺腫瘍のラジオ波焼灼療法(RFA)など、自分の受けたい部位をクリックすると、その治療を実施している病院名が表示される仕組みになっている。

(高木氏講演資料より)

 体への負担の少ない新たな治療選択肢として、RFAの活用が期待されそうだ。

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