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レポート

2022/06/21

日本食道学会・第1回市民公開講座より(3)

臓器を温存しつつ食道がんの完治を目指す放射線治療

福島安紀=医療ライター

 日本食道学会と患者支援団体の食道がんサバイバーズシェアリングスは、4月9日、第1回市民公開講座「知って備えて学んで予防 正しく知ろう食道がんの事」をオンライン開催した。食道がんの治療には、主に、内視鏡治療、手術、放射線治療、薬物療法があり、単独、あるいは複数を組み合わせた治療が行われる。放射線治療も重要な治療の一つだ。同講座では、京都大学医学部附属病院放射線治療科講師の坂中克行氏が、「食道がん患者さんに放射線治療ができること」と題して講演した。今回は、その内容をレポートする。

ステージIBの食道がんには6週間の放射線照射と抗がん剤治療を併用

 食道がんでは、ステージ(Stage)I~IIIで手術を希望しない、あるいは、体力的あるいは合併疾患の問題で手術が難しい場合に、放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせた化学放射線療法が選択肢になる。

 坂中氏は、実際に、がん検診で上部消化管内視鏡検査を受けてステージIBの食道がんが発見され、化学放射線療法を受けた患者を例に、その流れを次のように説明した。「化学放射線療法を希望する患者さんには、まず、放射線治療計画用のCT(コンピュータ断層撮影)の撮影を行います。私たちは、このCT画像をもとに放射線治療の計画を立てて、準備ができたら翌日以降、化学放射線療法を始めていきます」。

 放射線治療を受ける当日は、放射線治療室の寝台の上に横になり、照射を行う。放射線治療室に入ってから、放射線を照射し、部屋を出ていくまでの時間はおよそ20~30分程度という。これを1日1回、土日祭日は休みで、28~30回約6週間続ける。

(坂中克行氏講演資料より)

 「6週間というのは結構長い期間ですが、この期間にしっか治療を行うことが、病気が治ることにつながりますので、放射線治療を継続できるように、私たちがチームでサポートしています」と坂中氏は話した。

 化学放射線療法では治療効果を高めるため、放射線治療に、シスプラチンと5-FUなど2種類の抗がん剤を併用する。抗がん剤治療をするのは、1週目と5週目で、5-FUの点滴治療を4日間継続する必要があるため、抗がん剤治療をする期間は入院が必要になる。2~4週目、6週目は通院で放射線治療を受けるのが一般的だ。

(坂中克行氏講演資料より)

ステージIBに対する化学放射線療法の治療成績は手術に匹敵

 この患者の場合、約6週間に及ぶ化学放射線療法によってがんが消失した。ステージIBの食道がんでは、化学放射線療法で完治する例は少なくない。ステージIBの食道がんの患者368人に、手術と化学放射線療法のどちらかを選んでもらい、経過を追った臨床試験(JCOG0502)では、手術を受けた群の5年生存割合が86.5%、化学放射線療法を受けた群では85.5%だった。

 「少なくともステージIBに関しては、化学放射線療法は手術に匹敵する治療成績であり、化学放射線療法で食道がんが治ることはまれではないと言えます」と坂中氏は強調する。

(坂中克行氏講演資料より)

ステージII・IIIの食道がんでも化学放射線療法で完治が期待できる時代に

 一方、食道がんでは、がんが進行した状態で見つかる患者が多いのが実情だ。例えば、70歳代の男性は、胸のつかえ感を感じ、内視鏡検査とCT検査を受けたところ、ステージIIIの胸部食道扁平上皮がんと診断された。食道の温存を強く希望したため、化学放射線療法で治療することになった。

 「ステージIIかIIIの食道がんの場合には、通常、6週間の化学放射線療法に加えて、抗がん剤治療を2カ月行います。この患者さんも、化学放射線療法の後、追加の抗がん剤治療を受け、以降は無治療で経過観察をしています。治療前に認めていた病気は消失し、少なくともこの患者さんに関しては、食道を温存して再発なく5年生存しています」と坂中氏。

 手術を希望しないステージiiとiiiの患者94人を対象にしたJCOG0909試験では、経過観察中、万が一、食道やリンパ節に再発が認められた場合には、内視鏡治療や手術で根治(完治)を目指す治療を行った。まだ経過を追っているところだが、3年生存割合は74.2%と報告されている。

(坂中克行氏講演資料より)

 「約10年前に行われたJCOG9906試験では、同じように、化学放射線療法を行って、その3年生存割合は44.7%でした。この10年の間に、放射線治療や化学療法も進歩しましたし、手術や内視鏡治療による救済(サルベージ)治療の戦略が開発された結果、ステージII、IIIという、がんが進行した患者さんにおいても、可能な限り食道を温存してがんの根治を目指す治療が可能になってきています」。

頸部食道がんでは強度変調放射線治療で食道を温存する試みも

 坂中氏は、さらに、喉ぼとけの下の「頸部食道」と呼ばれる部分に腫瘍が発生する頸部食道がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)の試みについて紹介した。頸部食道がんの標準治療は手術だが、がんを切除する際、すぐそばにある喉頭や咽頭を一緒に摘出しなければならなくなることが多い。咽頭を切除すれば声を出せなくなり、喉頭を取ってしまうと口から酸素を吸い込むことができないので、気管切開孔という空気の通り道を作る必要がある。気管切開をすると空気の流れが変わって痰が増えたり、食べ物のにおいが分からなくなったり、入浴のときに肩まで湯につかれないなど、日常生活に影響が出るのが難点だ。咽頭を摘出しても電気喉頭や食道発声などで声を出す方法はあるが、トレーニングが必要になる。

 頸部食道がんと診断された50代の男性は営業職で、声を出せなくなると、これまで通りの仕事を続けるのが難しくなるため、食道を温存できる治療を希望した。ただし、頸部食道は脳幹や脊髄に近いため、一般的な放射線治療では強い放射線が照射できない。そこで、放射線の強さに強弱をつけ、病変や周囲のリンパ節に集中的に放射線を当てられる強度変調放射線治療を活用した化学放射線療法を導入したという。

(坂中克行氏講演資料より)

 「強度変調放射線治療を使うと、照射すべきところにエネルギーを集中し、照射を避けるべきところには放射線を当てずに済みます。この患者さんは、強度変調放射線治療を利用した化学放射線療法を受けて、腫瘤が消失しました。8年以上経過しましたが、手術を避けることができたので、喉頭は温存されて声はそのままです。当然、気管切開孔も皮膚変化もほぼなく、食事も普通に食べられて病前と変わらない生活を送ることができています」(坂中氏)。

 頸部食道がんに対して強度変調放射線治療を利用した化学放射線療法の臨床試験が日本で行われており、すでに患者の登録と追跡期間は終了している。結果はまだ発表されていないが、この臨床試験の結果次第では、強度変調放射線治療を活用した化学放射線療法が、頸部食道がんの治療選択肢の一つになる可能性がある。

 講演後のディスカッションでは、司会の慶應義塾大学医学部腫瘍センター准教授の浜本康夫氏から、食道がんの放射線治療は、がん診療連携拠点病院であれば受けられるのかという質問があった。

 坂中氏は、「拠点病院であれば、安心して放射線治療が受けられると考えていいと思います」と回答。「進行がんの場合には、化学放射線療法だけで終わらず、内視鏡治療や手術による救援治療が必要になることもあるので、全体的に食道がんの治療の経験が豊富な施設で受けたほうが良いのではないでしょうか」とコメントした。


日本食道学会・第1回市民公開講座より

早期食道がん、局所再発の治療選択肢として進化する内視鏡治療

食道がんと診断され、手術を受けるということ

食道がんの最新の抗がん剤治療とは

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