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レポート

2022/06/14

日本食道学会・第1回市民公開講座より(2)

食道がんと診断され、手術を受けるということ

福島安紀=医療ライター

 日本食道学会と患者支援団体の食道がんサバイバーズシェアリングスが、4月9日、第1回市民公開講座「知って備えて学んで予防 正しく知ろう食道がんの事」をオンライン開催した。食道がんの治療には、内視鏡治療、外科手術、放射線治療、薬物療法(化学療法)があるが、手術は、古くから要の治療だ。市民公開講座では、関西医科大学医学部准教授の山﨑誠氏が、「食道がんと診断され、手術を受けるということ」をテーマに講演した。

食道がん患者の約半数が外科治療の対象に

 上部消化管内視鏡検査の普及によって、ステージIの早期で食道がんが見つかる人は増えたものの、現在でもその割合は約30%で、70%の人はステージII以上の進行がんの状態で発見されている。外科治療の対象となるのは、ステージIの少し進んだところからステージII、IIIの患者だ。

赤字の割合は、食道がん患者のうち、各ステージに該当する人の割合                    (山﨑誠氏講演資料より)

 「食道がんの患者さんのおよそ半分くらいが手術を受けています。胸腔鏡手術などの普及によって、食道がんの手術では、ほとんどの患者さんは5ミリから1センチの穴を数カ所開けるだけになり、キズに関してはすごく小さくなりました。ただ、食道がんは首のつけ根から胃の周囲に至る広い範囲のリンパ節に転移しやすいので、食道の大部分と周囲のリンパ節を切除し、残った食道と細長くした胃をつなぎ直して食べ物の通り道を作ります」と山崎氏は、図を示しながら説明した。

(山﨑誠氏講演資料より)

術後の患者に多い悩みは食事に関することと体重減少

 山崎氏は、2021年に大阪大学から関西医科大学へ移ったが、大阪大学医学部附属病院在職時代から食道がん手術の後、患者に、手術と術後の生活についてアンケート調査をしている。その中から、次の3つの質問に対する189人の患者の回答の集計結果を報告した。

 1つ目の質問は、「手術を終えて、〝違う!″と感じたこと」だ。「一番多かった答えは、食べられない、食欲がない、食事に関することです。次に多かったのは、『体重がどんどん減る』です。あと、これはちょっと少なかったのですが、『こんなにしんどいとは思わなかった』、番外編として、『抗がん剤よりましだった』という人もいました」と山崎氏。

 2つ目の質問は、「手術を終えて、よかったこと」で、多かった答えのベスト3は、1. 「無事終わりましたよ」の一言でほっとした、2. 家に帰れたこと、3. ご飯が食べられたことだった。「よかったことなんてない」という人も2人いたそうだ。

 そして、3つ目に聞いているのは、「もしも、もう1度治療を受けるとしたらどうしますか」ということだ。すでに食道を切除しているので2回目の治療はないが、もう一度食道がんになったとしたらやはり手術を選ぶかどうか。「主治医だから遠慮しているのかもしれないのですが、最も多かったのは『先生に任せます』です。次に多かったのは『分からない』で、次になったときのことなんて考えられないという人もいたと思います。外科医としてはつらいのですが、『手術はこりごり』という人もいました。少ないものの、『やっぱり手術してもらってすっきりしたから、何回やっても手術してもらいます』という人もいて、ちょっと嬉しかった面もあります」と山崎氏は話した。

手術後は、ゆっくりよく噛んで食べ消化を促すことが重要

 食道がんで手術を受ける最大のメリットは、がんを取り除くことで治癒する可能性が高まることだ。ただ、食道の大部分がなくなり、胃の形が変わってしまうことで食事への影響は避けられない。健康な人の場合は、口から入った食物は食道を通って胃に入ると、胃酸や消化酵素と共に攪拌され、ある程度大きな肉片のようなものでもドロドロになって消化吸収される。ところが、食道がんの手術で食道の大部分を切除し、胃が細長い管のような形になると、胃に入ってきた食物を手術前のように攪拌できなくなる。また、食物の逆流を防ぐために胃酸の分泌を抑える薬を服用することもあって胃酸が少なくなり、消化不良のまま腸へ食物が流れるということになりやすいという。

 「この手術によって食生活の変化が起こる理由は2つあります。1つは胃を細長く(胃管)して首のつけ根まで持ち上げているために起こる変化で、早く食べると持ち上げた胃管の中に食物が溜まり、胸や喉元で食べ物が詰まった感じが起こります。もう1つは先ほど述べたように消化不良のまま腸に流れるために起こる変化で、消化不良の食べ物が腸に入ると腸がびっくりしてけいれんを起こしたようにキュルキュルとなって腹痛が起こったり、冷や汗をかいたりします。そのあと下痢になることもあります。その結果、体重はだいたい半年で10%減少、もともと60kgの人では54kgくらい、40kgくらいだった人ならなんと36kgまで下がってしまいます。2~3年したら元に戻るかというとそうではなく、5~10年経ったとしても、あまり増えないことが多いです。一方、食事摂取量は、手術後最初の1カ月でどんと落ちて、術前の2~3割しか食べることができません。その後、半年で半分程度、1年経過すると7~8割食べることができるようになり、ようやく普通の生活に戻ります。ただ、胃がんの手術で胃を全部取った人は実はもっと体重が減ります。慰めになるか分かりませんが、胃が残っているというだけでも少しましなのではないかと思います」(山崎氏)。

青線が食道がん手術を受けた人の平均的な体重減少率、赤線は食事摂取量の変化(山﨑誠氏講演資料より)

 手術後の体重変化については個人差があり、10kg以上やせて、何年経ってもそのまま体重が増えない人もいれば、元に戻る人もいる。では、食事を少しでも多く摂取でき、体重減少を防ぐにはどうしたらよいのだろうか。

 「これだという特効薬はないのですが、言えることはただ一つ、ゆっくりとよく噛んで食べてくださいということです。胃で攪拌できないなら、よく噛んで口の中で食物をできるだけ小さく消化させて飲み込むようにしてください。そうすることで消化不良になりにくく、腸でしっかり栄養を吸収することができます。時間の経過と共に少しずつ体が適応していくのを気長に待つという面もありますが、『ゆっくりとよく噛んで食べる!』、これをぜひ共実践していただきたいと思います」と山崎氏は強調した。

 そして、化学放射線療法などと比べた手術の利点として、改めて、「がんをきれいさっぱり取り除けるということで、取ったところにしかがんがなければ、究極の治療になり得る」点を挙げた。

(山﨑誠氏講演資料より)

 講演の最後に、司会の慶應義塾大学医学部腫瘍センター准教授の浜本康夫氏から、食道がん手術を受ける病院を選ぶ際、年間症例数がどの程度の病院を選んだほうがよいのかという質問があった。

 これに対し、山崎氏は、「食道がん手術については、たくさん実施しているほうがいいというデータがあります。では、何例以上がいいかは難しいところですが、よく言われるのは、年間30~50件くらいです。月に2~3例、あるいは週1回くらい食道がんの手術を施行している施設では、外科医だけではなく、看護師、栄養士なども含めたチームで、食道がんの手術を受ける患者さんをサポートする環境が出来上がっていると思います」と回答した。


日本食道学会・第1回市民公開講座より

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