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レポート

2022/05/31

卵巣がん体験者の会スマイリー代表の片木美穂氏に聞く

日本人卵巣がん患者特有の課題を医療者ではない立場だから支援できる

今村美都=医療福祉ライター

 世界中の卵巣がん患者会が集い2013年にスタートした世界卵巣がんデーは、2016年には世界卵巣がん連合の発足へと発展し44カ国170以上の団体が参加、生まれた国や地域に関わらずすべての卵巣がん患者が生存率やQOLの高い治療が受けられるよう活動を展開してきた。
 第1回世界卵巣がんデーから参加し、世界卵巣がん連合にも初年度から参加している卵巣がん体験者の会スマイリーは5月8日に「卵巣がんフォーラムin Japan」を開催し、卵巣がん治療の最新情報やリンパ浮腫への正しい理解とケア、卵巣がんにおけるホルモン補充療法の誤解と真実、全人的痛みに対する緩和ケアなど、卵巣がん患者が求める、あるいは卵巣がん患者に知ってほしい情報について発信を行なった。スマイリー代表の片木美穂氏に、卵巣がん患者を取り巻く現状と課題を聞いた。


患者会にも科学性に基づく患者支援が求められている

 「卵巣がん体験者の会スマイリー」が設立されたのは2006年。卵巣がん患者が直面していたドラッグ・ラグ解消のために、有志が集ったことから始まった。署名活動や政策提言などの活動を精力的に行った結果、卵巣がんに止まらず、他のがん・疾病の治療薬の早期承認に貢献した。卵巣がんに特化した患者会として科学性に基づく患者支援・発信を行なっていることが評価され、2019年にはIGCS(the International Gynecologic Cancer Society:国際婦人科がん学会)ブラジル大会で IGCS Distinguished Advocacy Awardを受賞。2019年3月時点で会員700名以上を擁する患者会だったが一旦解散し、現在は会員制度を取らない患者会として再スタートしている。「すべての卵巣がん患者・家族がスマイリーの会員」(片木氏)という新たな方向性は、2022年世界卵巣がんデーのテーマであった「NO WOMAN LEFT BEHIND」に通じる。卵巣がん患者の相談支援にも注力しているが、昨年の相談件数は1000件を超えた。今年はそれを上回ると予想されるペースで相談が舞い込んでいる。

 日々相談を受ける中で片木氏が痛感するのが、患者と医師とのコミュニケーションの問題だ。これはスマイリーが行なった「医師とのコミュニケーションに関する調査」の結果にも現れている。この調査は、2021年12月27日から2022年1月21日の期間、卵巣がん・卵管がん・腹膜がん・原発不明がん(卵巣がん治療に準じた)の患者および家族を対象に、WEBアンケートの形式で行われた。患者会のWEBサイト、SNS、メールマガジンから参加を呼びかけ160名が回答した。そして主治医に不安や質問を伝えることに関して「時々伝えられないことがある」と答えた患者・家族も含めると、半数以上が伝えられないという経験をしていることが明らかになった。そう回答した88名の理由の内訳は、「医師が忙しそう」(47名)、「医師に伝えてもわかってもらえなそう/わかってもらえなかった経験有」(38名)に続き、「医師に伝えてよいのか判断できない」(33名)、「自分が不安や質問を言語化できない」(29名)であった。

 世界卵巣がん連合が2018年に世界44カ国1531名の女性(日本からは250名が参加)を対象に実施したEveryone Woman Study研究では、99.2%の患者が「精神的なサポートを必要としている」と答えた。「どの時期に必要としていたか」(複数回答可)には、「診断時」と答えた患者の割合が65.9%だったが、国別の比較において、日本からの回答には注目すべき差があったことが報告されている。「診断時」は日本女性の21.5%に対し全体は32.1%、「治療終了後」は11.7% に対し 22.8%と、全体平均よりも低い割合である一方、「がんが再発した場合」は33.7%に対し全体は20.5%、「がんが治らないと告知された時」は29.6% に対し16.5%と、日本では診断時や治療終了後よりも再発や治らないと判明した時に精神的サポートを必要とする患者が多いことがわかった。

 日本人女性が症状について医療者に相談していた割合は全体平均78.3%に対し62.8%と低い。しかしながら、症状について医療者に相談した日本人女性は全体平均と比べて、1カ月以内に診断された割合が43.2%に対し56.3%と高い一方、初診から診断までに1年以上かかった割合も2.8%対11.3%と非常に低い。症状を自覚してから診断されるまでの推定期間は、全体平均31週に対して日本人女性は21.7週、初診から診断までの推定期間は全体平均20週に対して日本は11週という結果も報告されている。つまり日本人は、自覚症状があっても医療者に相談しない傾向にあるが、いざ受診すれば診断までは早い傾向にあることが窺われる。

 「診断から初期治療までの流れはガイドラインもしっかりしており、日本の卵巣がんの初期治療のレベルは世界的に見ても高水準ということが言えると思います。医師もエビデンスに基づいて自信を持って説明がしやすい。一方で、再発の患者さんに『根治できますか?』と聞かれても再発の説明は不確定要素が多く、医師も曖昧な答えになりがちで、患者さんの不安との乖離が大きくなってしまいます。また、再発してからの情報は世の中に非常に少ない。そうした背景がこれらの調査結果に現れていると考えられますが、患者会には、早々にキードラッグにアレルギーを出しながらも15年選手の方もいれば、ステージIIIで一時はストーマを必要とする状況から回復した患者さんもいるなど、医療者ではないからこそ伝えられることがある。医師と患者さんをつないで、患者さんの安心材料になる情報を提供することができます」と、片木氏は患者会による患者支援の重要性を語る。

 一方で、「“お気持ち”はもちろん大切ですが、患者さんの気持ちに伴奏しながら、患者会もエビデンスに基づく情報を提供することが重要」だと、“お気持ち”に偏りがちなピアサポートにおいても科学性のある情報提供が欠かせないことを強調する。

日本らしさに配慮した医療のあり方を

 近年増えているのが、遺伝子医療に関する相談だ。Everyone Woman Study研究が行われた2018年の段階では、日本ではまだPARP阻害薬、ひいてはPARP阻害薬のコンパニオン診断としてのBRCA遺伝学的検査も承認されておらず、遺伝子検査を受けたと答えた患者の割合は日本5%、アメリカ79.1%、オーストラリア65.8%、カナダ64.5%、イタリア63.5%、イギリス59.8%だった。全体平均の51.1%、ハンガリー20.7%、ブラジル20%と比較しても明らかに低い。現在は保険収載されコンパニオン診断を受ける患者の割合は高まっているが、コンパニオン診断が実施できるのは、経験豊富な専門医がいることや遺伝カウンセリング体制が整っていることなどの条件を満たす医療機関に限られ、すべての医療機関で受けられるわけではない。また、日本特有の課題として、遺伝性のがんであることを知ってしまうことへの患者本人や家族の心理的抵抗の大きさがあるが、サポート体制は十分とは言えない。

 片木氏が世界卵巣がん連合で「日本では知らないままでいることより知るショックのほうが大きい。娘にどう伝えるかや将来への不安に悩んでいる」と話すと、「知ることで予防ができるのになぜ?」と不可解な顔をされることが多い。遺伝子医療に対してポジティブな海外との意識の差を感じます」と片木氏。Everyone Woman Study研究を始め、世界卵巣がん連合を通じて世界の患者会と交流をする中で、卵巣がんを取り巻く日本特有の状況が見えてくると言う。「国際的な基準に当てはめようとすると、日本の患者が辛くなる。そうではなく、文化的配慮をした上で、日本らしい医療のあり方を模索したい。卵巣がんになったけど、人生捨てたものではないと思える、患者の人生を充実させる活動を続けていきたい」。

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