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レポート

2022/05/24

日本肺癌学会市民公開講座2022 in京都より(4)

がんの患者・家族が実践したい病気との向き合い方と不安への対処法

福島安紀=医療ライター

 日本肺癌学会は、3月26日、肺がん医療・疾患啓発のための市民公開講座「肺がんへの向き合い方と最新治療をみんなで学ぼう2022 in京都」をオンライン開催した。肺がんに限らず、がんの患者や家族は、「がんの疑い」と言われた時点から、告知後、治療中、治療後もさまざまな不安を抱えている。市民公開講座では、兵庫県立姫路循環器病センター緩和ケア内科部長の坂下明大氏が、神戸大学医学部附属病院でがん患者の緩和ケア治療やサポートをした経験を基に「肺がんとの向き合い方と不安の対処について」をテーマに講演した。今回は、その内容をレポートする。


がん患者の3人に1人が不安や心の問題を抱えている

 坂下氏がまず挙げたのは、がんの患者からよく寄せられる相談例だ。「どこの病院へ行けば良いのか」、「告知をされたが、なかなか病気であることを受け止められない」「主治医の先生とうまく話せない」「話を聞いて欲しい」「副作用が心配」「仕事はどうしたら良いのか」「セカンドオピニオンはどこで受けられるのか」「医療費はいくらかかるのか」「治験・臨床研究はどこで受けられるのか」「緩和ケアって何ですか」「がん遺伝子パネル検査について知りたい」「同じ病気の人と話したい」「病気の家族にどう接したらよいのか分からない」――。このように、患者や家族の悩みや気がかりは多岐に渡る。

 「2013年に、20歳以上のがん患者さん4054名を対象に、がんの診断治療を受けて悩んだことを聞いた『がん体験者の負担等に関する実態調査』(「がんの社会学」に関する研究グループ(研究代表者・山口建・静岡県立静岡がんセンター総長))では、約3分の1の方が不安など心の問題を挙げています。受診するまで、あるいは検査をするまでにいろいろな不安を感じられると思いますし、『肺がんです』という病名告知の部分でも衝撃を受けます。治療については、手術を受けること、放射線治療、薬物療法に対しての不安、副作用への不安があると思います。その中で、日常生活をどう送ればいいのか、手術でがんが取りきれたと言われても、経過観察中には、再発するのではないかという不安があります。あるいは再発してしまった場合、その治療はどうなるのか、死んでしまうのではないか、そんないろいろな不安を抱えているのではないかと思います」と坂下氏は話した。

(坂下明大氏講演資料より)

元の状態に回復するためにストレスを上手くコントロール

 がんの患者に限らず、強いストレスを感じたときには、気分が憂うつになり、何をしても楽しめない、集中できない、イライラする、怒りっぽくなる、心配なことが頭から離れないなど、さまざまな心の反応が起こる。飲酒量が増える、食欲がなくなるなど、体や生活に影響が出る人もいる。

(坂下氏講演資料より)

 「病気と上手につきあうために、皆さんに知っておいていただきたいことは3点です。1つ目は、こういった心の負担を感じるのは自然なことだということです。2つ目は、ストレスを受けても、誰もが元の状態に回復する力を持っています。これはレジリエンスと言われます。そして3点目は、このレジリエンス、元の状態に回復する力を十分に発揮するためにも、ストレスを上手くコントロールしていくということが大事です。これを我々は、コーピングと言ったりします。このコーピングをしながら元の状態に回復していく、レジリエンスを促していくということが大事です」。

 そのために坂下氏が提案するのは、第1に「自分とストレスとの関係性を知る」ことだ。普段、どんなとき、どんなことにストレスを感じ、どんな反応をしやすいか振り返り、自分なりのストレス対処法を見つけることがポイントという。

 2番目は、「自分に合ったストレスの対処法を実践する」こと。「趣味に打ち込む、外出・旅行をする、音楽を聴くなど病気を忘れる時間を作って気分転換をする方もいるでしょう。人に相談する、疑問や心配事を紙に書き出す、今考えるべきことと後で考えるべきことを分けてみる、落ち込みや不安になっている自分を責めないようにするなど、過去にご自身が、これは役に立った対処法を思い出してみてください。それが自分に合ったストレスの対処法になるのではないかと思います」と坂下氏。

 前述の「がん体験者の負担等に関する実態調査」でも、悩んだ時の対処方法で最も多かったのは、「心の切り替え、受け止める、考え方の転換」だった。次に多かったのは「病気、生活、心や体の変化・自分なりの方策や行動を考えてみる」、そして「情報検索や情報入手、病気や治療を学ぶ」だった。

(坂下氏講演資料より)

呼吸リラクゼーションや正しい情報の収集も不安を解消する手段に

 ストレスを感じたときの対処法の一つとして坂下氏が勧めるのは、呼吸によるリラクゼーションだ。時計の秒針やスマートフォンなどを見ながら、3秒ゆっくり吸って、息を3秒止め、6秒かけてゆっくり吐く。

「吐くときに少しずつからだの力を抜き、もしその中で感情が沸き上がったら、どんな感情が出ているのか考えてみてください。そういったことを5~10回繰り返してみましょう。1回12秒なので、5回で1分、10回やっても2分です。私は、通勤で電車に乗っている時間にこういった方法を実践し、リラクゼーションをしています。やってみようかなという方は、ぜひ試してみてください」(坂下氏)。

(坂下氏講演資料より)

 不安や強いストレスから元の状態に回復していくために実践できることの3番目として坂下氏が挙げたのは、「正しい情報を集める」ことだ。国立がん研究センターがん対策研究所が運営する「がん情報サービス」、日本肺癌学会が作成した『患者さんのための肺がんガイドブック2021年版』(金原出版)など、信頼できる機関や団体が出している冊子、ウェブサイトなどが参考になる。

 「各種疾患の情報の他、家族のサポート、食事の工夫などいろいろな情報が出ています。がん診療連携拠点病院には、がん相談室、あるいはがん相談支援センターが必ず設置されています。そちらの方にアクセスしていただければ、正しい情報の入手の仕方も紹介しています」と坂下氏は語った。

(坂下氏講演資料より)

医療者との対話を深め納得できることが一番大事

 そして、不安や強いストレスから回復していくために実践できる対処法の4番目は、患者会、患者サロンなどで「同病者と交流する」だ。同じ立場の患者や家族同士ががんのこと、生活のことを気軽に語り合う中で、気持ちが癒されたり、解決法が見つかったりする場合もある。

 5番目は、「医師(医療者)と相談する」こと。「診察時に質問項目を整理したメモを持参する、心配ならご家族や友人、信頼している方に同席してもらうのも一つの方法です。病院によっては、看護師が同席するところもあります。主治医から、病状について十分説明を受けたうえで、ご自身が納得できることが一番大事だと思います」と坂下氏は述べた。

 一般的には、がんの受診、診断、告知を受けたときには、衝撃、否認、絶望、怒りといった感情が沸き上がっていったん落ち込むものの、我々には、レジリエンス、自然に回復する力があり、2週間くらいで日常生活には支障のないレベルに回復していく。しかし、2週間を超えても、集中力低下、食欲低下や不眠、不安、悲嘆、落胆、うつ状態が続いてしまう場合には、適応障害やうつ病が疑われる。

(坂下氏講演資料より)

 「気持ちが落ち込む」、「楽しめない」のどちらか、あるいは両方を含む、下の5項目以上の症状が2週間以上続いている場合には、うつ病である可能性が高い。がんの患者、あるいは家族がそのような状態が続き日常生活に支障が出ているときには、我慢したり放置したりせず、主治医や看護師などの医療者に相談することが重要だ。通院治療中なら緩和ケア外来、入院中なら緩和ケアチーム、精神科リエゾンチームに相談する方法もある。

(坂下氏講演資料)

家族も緩和ケアや相談支援センターを活用し心のメンテナンスを

 一方、がん患者の家族は、「患者を支える立場」と「衝撃を受けている当事者の立場」という2つの立場を経験する。がん治療の現場では、家族は「第2の患者」と呼ばれ、緩和ケア外来や相談支援センターでのサポートは家族も対象となる。家族自身が心のメンテナンスをすることも大切になる。

 坂下氏が、家族が患者に上手に気持ちを伝えるためのポイントとして挙げたのは、次の5点だ。1. 本音を伝え合うことをためらわない、2. スキンシップなど言葉以外の方法も使う、3. 「大丈夫?」「何かあったのか」などと時には素直に聞いてみる、4. 何かしてあげようとするのではなく共に感じ、分かち合う、5. 「何かあったら言ってね」などと伝え、時には待つことも必要――。

 最後に坂下氏は次のように強調し、講演を締めくくった。「今日、私がお伝えしたかったのは主に3点です。1つは、医療従事者と十分に対話し情報収集をし、患者さんご自身、あるいはご家族が納得できるということが大事だということです。2つ目は、病気とうまくつきあうということで、ご自身のストレスにまず気づいていただく。そして気づいたら、ご自身に合ったストレスの対処方法を見つけてコーピングをしていただくと良いのではないかと思います。そして3つ目ですが、誰しも、元の状態に回復する力を持っています。その回復する力、レジリエンスを発揮するためにも、ご自身に合ったコーピングを実践してください」

 市民公開講座の最後に行われたQ&Aセッションでは、視聴者から、「早期緩和ケアの対象となる患者さんとは? 具体的定義、地域格差、医師の認識に差はないのか、早期緩和ケアが受けられる医療機関の現状と整備状況について教えてください」との質問が出た。日本では、がん対策基本法やがん対策基本計画で、「診断時からの緩和ケア」を推進している。

 この質問に対し坂下氏は、「痛み、吐き気のような体のつらさ、不安、気持ちのつらさ、社会的な苦痛などに対する『基本的な緩和ケア』は、がん治療を担う医療者全てが、診断時から提供すべきものです。一方、進行期の肺がん患者さんに対して治療と並行して専門家が専門的な緩和ケアを提供すると患者さんのQOLが上がるという海外のデータを受けて、日本でも『専門的な緩和ケア』を早期から推進して行こうということになりました」と説明。

 全国に約400カ所設置されている、がん診療連携拠点病院では、緩和ケア外来、緩和ケアチームを設置することが義務付けられている。しかし、日本緩和医療学会認定の専門医は、2022年4月1日現在304人と少なく、緩和ケア病棟や在宅医療、循環器病院などの現場で働く緩和ケア専門医もいる。

 「がん診療連携拠点病院の全てで早期から専門的な緩和ケアが提供されているかというと答えは『ノー』です。まだ不十分なのが実情ですが、専門的な緩和ケアが受けたいときには、ぜひ、主治医の先生や相談支援センターに相談してください」と坂下氏は回答した。

 日本肺癌学会は、2022年中に計6回、「肺がん医療・疾患啓発のための市民公開講座」をオンライン開催する予定だ。6月25日(土)に福岡市、7月23日(土)に岐阜市、9月17日(土)に愛媛県松山市、11月19日(土)には千葉市で開催されることになっている。詳細は、同学会のホームページで随時公開され、全国どこからでも視聴できる(https://convention.kijima-p.co.jp/jalca2022_shimin/)。

日本肺癌学会市民公開講座2022 in京都より

肺がん手術は傷も切除範囲もできる限り小さくする方向へ進化

治療効果を高め有害事象を減らす方向へ進化する肺がんの放射線治療

日進月歩で発展し個別化が進む「肺がんの薬物療法」

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