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レポート

2022/04/12

AYAがんの医療と支援のあり方研究会が市民公開講座を開催(2)

AYAがん患者の就労支援でも重要なダイバーシティ&インクルージョン

福島安紀=医療ライター

 AYA (Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人))がんの医療と支援のあり方研究会が、3月19日、市民公開講座「AYAがん患者の就学・就労を支える」をオンラインで開催した。AYA世代のがん患者の就職、就労の継続には、企業によってまだ課題がある。市民公開講座では、そうした課題解決のヒントを見出すべく、EY Japan(株)Diversity,Equity and Inclusivenessリーダーの梅田恵氏が、「企業から見たAYA世代のがん D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の新たな潮流」をテーマに、基調講演を行った。


全ての違いを受け入れ、その違いを生かす環境整備を

 近年、ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion)に取り組む企業が増えてきた。講演の冒頭、梅田氏は、「ダイバーシティは多様性のことですが、日本では男女共同参画など、女性の課題解決というふうに狭義にとらえられることがあります。しかし、ダイバーシティは全ての違いを尊重するということで、個人の尊重という面が注目されています。単にマイノリティの課題解決ではないということが今日の話のポイントです。そして、インクルージョンは、さまざまな違いを同化させず、それぞれの違いを生かしていく環境のことです」と説明した。

  梅田氏が、ダイバーシティ&インクルージョンを実現するうえで重視するのが、「Sense of Belonging(センス・オブ・ビロンギング)」という考え方だ。「センス・オブ・ビロンギングは、心理的安全性、ありのままを受け入れてもらえるという感覚を一人ひとりが持つことです。マイノリティの人だけではなく、マジョリティの人もみんながそういう感覚を持てるということです。お互いに相手がそういう感覚を持てるように努力することが重要です。AYA世代の患者さんはがんになって、自分の生きている存在意義もビロンギングという感覚があれば変わってくるのではないかと思います」と語った。

病歴、内部・精神障害など見えにくい特徴・個性にも配慮を

 心理的安全性は、病気や障害、コンプレックスなど自分の弱みをオープンにでき、自由に意見を言えるだけではなく、「そんなことを言ったらどんなふうに思われるだろうか」という心配がない状態だ。そういう状態を醸成するためには、リーダー自身が、経験してきたコンプレックスなどを開示し、メンバーが思っていることを安心して堂々と話せるような雰囲気を作り、チームの人たちの状況をしっかり見てフォローしていく必要があるという。
 
 「ダイバーシティの初期は目に見えて分かる違いに取り組んで行くのが王道ですが、見えているところは氷山の一角です。一人ひとりの個性を形成しているものは実は見えない部分の方が多い。見えない部分にいかに配慮できるか、想像力を働かせて相手を思い合って動けるかがインクルージョンの中では必要になってくると思います」と梅田氏。

マジョリティ側が一歩踏み出すことでマイノリティの活躍の場が広がる

 これまでの、ダイバーシティ&インクルージョンの進め方は、ともすれば、マイノリティの人が頑張って解決する努力をしなければいけないというアプローチになりやすい傾向があった。しかし、近年、マジョリティの特権に焦点を当てた研究も進んでいる。

 梅田氏は、「マジョリティ側が労せずに得ている特権、マイノリティの人の前にある差別、ドアの存在に気づいて、ドアを開けることにマジョリティ側が一歩踏み出すことによってマイノリティの活躍の場が広がります。2019年に、東京大学の入学式の祝辞の中で上野千鶴子先生が話したように、フェミニズムは、弱者が強者になりたいということではなく、弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想です。頑張ろうにも頑張れない人に頑張れというのではなく、どうしてその人が頑張れない状況にあるのかを周りの人が確認して、同じようになるためにはどういうサポートが必要か、その人に合わせて対応していくエクイティ(Equity:個人差をきちんと考慮して、それぞれに見合ったリソースの配分をするという考え方)が重要です」と話した。

 障害のある人に対する対応も、リハビリをして健常者と同じようにできるようにしたり、障害者ができる仕事を与えたりする「医学モデル」ではなく、社会のほうが障壁を取り払う「社会モデル」への転換が進んでいる。「マジョリティの人に合わせて作られた仕組みをマイノリティの人も自由に使えるようにユニバーサルなデザインへ変えていくということです。企業の中でも人事制度を女性向け、障害者向け、LGBT向けというふうに作るのではなく、みんなが使えるユニバーサルなデザインにすると、実はマジョリティの人にも良い仕組みになります」(梅田氏)。

ユニバーサルな環境を整え誰でも参加できるように企業文化の変革が必要

 企業の中で求められているのは、メンバー1人ひとりを尊重するインクルーシブなリーダーだという。「今までは、その人が立っている立場を考えずに同じような台を与えて、平等にしているのだからできないほうが悪いという考え方でしたが、そもそも立っている土台が違うのだから、その人に合わせた対応、ユニバーサルな環境にするのが良いのではないかというのが、今日私が伝えたかったことです。傍観者を増やすことではなく、性別や病気、障害の有無、国籍の違いに関わらず、誰でも同じ協議や試合に参加できるようにしていくのがダイバーシティ&インクルージョンの本来の目的です」と梅田氏は講演をまとめた。
 
 参加者からは、「ダイバーシティ&インクルージョンは、余裕のある大企業ではないと取り組みにくいのではないか」という質問が出た。梅田氏は、乳がん治療をしながら仕事を続けた実妹が勤めていた会社を例に、次のように回答した。「彼女は宮崎の小さなコールセンターに勤めていたのですが、就労をあきらめかけたときに上司に働き方を変える提案をされ、課長に昇進させてもらい、『がんは医療費がかかるのだから頑張りなさい』と励まされ、支えてくれる人のために頑張っていました。逆に小さい会社のほうが、その人がいなくなったら大変なわけだから、どうやってその人を支えて働いてもらうかということで動けるのでないでしょうか」

 そして、AYA世代のがん患者の就学、就労問題について、「障害、LGBTなどと分けてアプローチすると狭間に落ちてしまう人がいるので、がんの人たちも含めてインクルージョンということで考えられないのかなと思いました。障害者手帳をがんの人にも広げられたら良いのではないでしょうか」と提案した。ダイバーシティ&インクルージョン、エクイティが企業や社会に浸透することで、がんになったことがハンディにならず、AYA世代のがん患者の就職、就労の継続がスムーズに進むようになることを期待したい。


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