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2022/04/05

AYAがんの医療と支援のあり方研究会が市民公開講座を開催

がんになっても治療と並行して高校生活を体験できる支援を

福島安紀=医療ライター

 AYAがんの医療と支援のあり方研究会が、3月19日、市民公開講座「AYAがん患者の就学・就労を支える」をオンライン開催した。AYAは、Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字を取った略語で、一般的に、15~39歳を指す。市民公開講座では、聖路加国際病院小児科医長の小澤美和氏が、「がん治療は大事、でもAYA世代にとってもっとも大切に思える教育の先にあるもの」と題し、小中学生に比べて遅れている高校生のがん患者への就学支援の現状と課題について基調講演した。


高校時代をどう過ごすかがアイデンティティの基盤

 AYA世代の中でも「A世代」と呼ばれる思春期は、親子の愛着を形成する小児期を経て、友人や恋愛関係の中で協力したり対立したりしながら成長し、社会性を育む時期だ。「高校時代をどう過ごすかがアイデンティティの基盤になっていくのではないかと思います。この時期にがんに罹患した場合、その治療だけに集中するのではなく、高校生活を並行して体験できることは人として育っていくうえで大事な体験になります」と小澤氏は語った。

 日本では、心身の病気のために体力が弱った児童・生徒を対象にした「病弱教育」という概念がある。小澤氏は、1995年に当時文部科学省の病弱教育調査官だった横田雅史氏が、中央教育審議会への提言の中で、病弱教育には次の5つの意義があるとしたことを紹介した。1つは、学習の遅れの補完・学力の補償、2つ目は、積極性・自主性・社会性の涵養、3つ目は心理的安定への寄与、そして、4つ目は、教育を受けることによって、病気に対する自己管理能力が身に付き、5つ目として治療上の効果も得られるという。

 また2011年には、中央教育審議会が「学校におけるキャリア教育の在り方」という答申を出し、キャリア教育を「生き方支援」と位置づけた。学校教育の中で、1. 人間関係形成力・社会形成能力、2. 自己理解・自己管理能力、3. 課題対応能力、4. キャリアプランニング能力の4つの能力を、教育を通じて身に着けることが提案されている。

聖路加国際病院小児科医長の小澤美和氏

高校生のがん患者の7割が治療のために休学か退学しているのが現状

 厚生労働省の「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」班が、2016年にAYA世代の患者を対象に実施した実態調査によると、こうした教育を受けるべき大事な時期にがんになった15~19歳のがん患者は、治療中、治療後も、将来のことや学業のことに不安を抱いている。

 こういった状況を受けて、2018年3月に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」では、「特に、高校教育の段階においては、取組が遅れている」と指摘。「小児・AYA世代のがん患者が治療を受けながら学業を継続できるよう、入院中・療養中の教育支援、退院後の学校・地域での受け入れ体制の整備等の教育環境の整備」を求めている。

 しかし、国立がん研究センターがん対策情報センターが2019年に実施した「小児患者体験調査」では、「休学」、「退学」という形で、7割の高校生ががんために学業の中断を余儀なくされ、治療に専念せざるを得なかった実情が明らかになっている。

 「『治療中に何らかの支援制度を利用したか』という問いに対しても、高校生は2割くらいしか利用できない環境にいたということです。さらに、高校生が入院中、高校教育を継続して受けられていたかを医療者に聞いたところ、小児がん治療グループでは約6割が高校生も教育継続が受けられたと回答しています。一方、成人診療科に入ってしまうと、高校生は25%しか教育継続ができていないのが現状です」と小澤氏は指摘した。

(小澤美和氏発表資料より)

特別支援学校や教育委員会のコーディネーター活用を

 担任の先生がお見舞いに来たときに、「学校のことは気にせず、治療に専念してください。留年しても卒業はできますよ」などと、恐らく励ますつもりで言った言葉が、高校生のがん患者を深く傷つける場面もよく目にするという。「新型コロナウイルス感染症の影響で遠隔教育が普及してきたので、授業が受けやすくなった面もあります。やはり、直接会える少し年上のボランティアとの対話などで自分の将来に思いをはせたり、画面越しでも、仲間や先輩と会ったりすることがすごく力になったという声も聞きます。がん治療を受けながら高校生活が継続できるように、ぜひ、どこかに相談するというところから始めて欲しいと思います。各地域にある特別支援学校や教育委員会に設置されているコーディネーターを活用してください」と小澤氏。

 AYAがん患者やその家族が、「通っている学校や行政に、治療と高校生活を両立できるようにしたい」と依頼しても、「前例がない」と断られてしまうこともある。そういった場合に前例を示せるように、厚生労働省の「AYA世代がん患者に対する精神心理的支援プログラムおよび高校教育の提供方法の開発と実用化に関する研究」班が、『高校教育とがん治療の成立のために 長期療養中の高校生の希望に応える好事例集』を作成している。『高校生活とがん治療の両立のための教育サポートブック』も参考に、がんになっても高校生活が継続できるようにすることが重要だ。

 大阪府では、高校生のがん患者が大阪市役所へメールを送ったことをきっかけに、長期入院中の高校生の病室へ非常勤講師を派遣する制度が2012年にスタートしている。名古屋市も療養中の高校生に遠隔教育を提供する制度を始めるという。
 
 「高校生らしく治療が遂行できるためには、まずはキーパーソンが存在すること、教育支援を必要とする高校生がどこにいるか把握し、養育者、医療者、教育者が彼らに教育の継続が大事だという共通認識を持つことが大切です。地域格差をなくしていく努力を私たちがしなければいけないですし、これを本人、家族、教育機関、医療現場へ周知していく必要があると考えています。人として育っていくときに、仲間を作って社会へ出ていく課程の中で、高校という時期がどれだけ大切か、この環境から孤立させないことが彼らにとって大事な支援です」と小澤氏は強調した。

 視聴者からは、大学生活と治療の両立の現状を問う質問があった。小澤氏は、「大学は高校とほぼ同じか、さらに難しい状況ではありますが、大学の中に学生相談室が設けられているので、そこに相談できるといいかなと思います。学費の相談もできるはずです」と回答した。高校生なら入院した病院がある地域の特別支援学校などのコーディネーター、大学生なら学内の学生相談室などに相談し、がんになっても、学業、学生生活が継続できるようにすることが大切だ。


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